アラブ遊牧民の移動と環境適応メカニズムの研究-「水」が創る文化と社会-

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07044005
• 研究機関: 東京外国語大学
• 研究代表者: 西尾 哲夫 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (90221473)
• 研究分担者: 小田 淳一 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (10177230) ; 堀内 正樹 広島市立大学, 国際学部, 助教授 (10209281) ; 川床 睦夫 中近東文化センター, 主任研究員 (00260141) ; 水野 信男 兵庫教育大学, 学校教育学部, 教授 (50032511)
• キーワード: アラブ / 遊牧民 / 移動 / 環境 / 水 / データベース / 系図 / フォークロア

研究概要

【1】シナイ半島での冬期の参与調査を平成7年12月より平成8年1月にかけて実施し、水の豊かな冬期に「水」文化の諸相を調査した。調査事項は、「水」に関わる民族語彙と民族科学の聞き取り調査、「雨乞い」儀礼等の民族芸能に関する聞き取り調査、井戸堀りや水路等の民間技術と生活関連用具の調査、部族間の「水」資源分配方法に関する聞き取り調査、「水」に関わる民話(水神物語等)の聞き取り調査である。
【2】Kahhalaの『アラブ部族集成』の部族データを項目ごとに入力し、データベース構築のための基礎資料とすると共に、アラブ遊牧民研究文献の中で、文化人類学に関するものを目録化して入力した。
【3】アラブ世界研究所(在パリ)、ロンドン大学東洋アフリカ学院、カタール・フォークロア研究センター(在ド-ハ)にてアラビア語データベース作成に関する情報交換を行った。
なお、当初計画とは次の点で変更があったが、研究上支障はなかった:■研究分担者の水野を通じて、カタールのフォークロア研究センター所長より、研究代表者である西尾に招待状が送られ、遊牧民文化研究に関する情報交換と将来における共同研究参加の可能性について討議した。■「水」文化の社会人類学的調査の担当であった堀内が事情により参加できなくなったため、同様の調査を行うべく森高久美子を研究協力者として選んだ。
本年度の調査の結果、次のような新たな知見が得られた:【1】参与調査により、ヒズルをめぐる民間信仰が「水」をめぐる定住民/遊牧民の間の共有文化として重要なことが判明した。定住社会(農村等)の調査が今後待たれる。【2】ヨーロッパやアラブ世界の研究機関において様々なデータベース計画(例えばアラブ人名データベース等)が進行中であり、日本の研究機関もこれらの計画に参画し、情報交換を密にする必要がある。

研究成果

• [文献書誌] 西尾哲夫: "沙漠と話す-空間・異人・民話-" 沙漠に学ぶI-沙漠環境における自然と人間(中近東文化センター). (印刷中). (1996)
• [文献書誌] 西尾哲夫: "Where does the wadi come from? : Cognitive space of the Sinaitic bedouin" Essays in Northeast African Area Studies(国立民族学博物館). (印刷中). (1996)
• [文献書誌] 水野信男: "雅楽に似たイスラーム古典音楽" アラブ. 73. 6-8 (1995)
• [文献書誌] 川床睦夫: "Frankincense and Incense Burners : An Aspect of the Red Sea Trade in the 16th Century" Korean Journal of Middle East Studies. 16. 599-611 (1996)
• [文献書誌] 堀内正樹: "沙漠に還る-墓-" 沙漠に学ぶI-沙漠環境における自然と人間(中近東文化センター). (印刷中). (1996)
• [文献書誌] 小田淳一: "計量的民話構造記述試論" アジア・アフリカ言語文化研究. (発表予定). (1997)
• [文献書誌] 西尾哲夫: "The Bedouin Arabic Dialect of the Jbali Tribe(Southern Sinai)." Otto Harrassowits (Wiesbaden,Germany) (出来予定), (1997)
• [文献書誌] 水野信男(分担): "新・音と映像による世界民族音楽体系" 平凡社・日本ビクター, 173 (1995)
• [文献書誌] 川床睦夫: "エジプト・シナイ半島の港湾遺跡 トゥール遺跡の発掘調査概報 1994年度" 中近東文化センター, 69 (1995)