研究課題
国際学術研究
1.日韓研究者の共同調査成果。済州島では高内里、新興里、梨湖洞、威徳里、杏源里を調査地とし、日本では主に東京都荒川区、大阪市生野区で調査を実施した。その結果、次の点が明らかになった。(1)戦前から済州島各地域は、血縁と同郷縁を通して、日本に多くの出稼ぎ者、移住者を送り出しており、戦後もこのネットワークを通して人の流れが続いた。(2)日韓国交成立後、1970-80年代にかけて、在日出身者から同郷会を通して故郷に多額の寄贈、援助がなされ、これは各里の社会基盤整備に重要な役割を果たした。(3)同郷会は、90年代始めから、2世を中心とする相互の親睦に重点をおくものに変化した。(4)70-80年代に成立した、済州島の各里と在日同郷団体の間にあった「一つの生活世界」のイメージと社会的ネットワークは、90年代以降、解体、分化の方向にある。2.個別的な研究成果。(1)東京都の高内里出身者の固有産業である鞄製造業の形成史とネットワークを解明した。(2)葬儀、墓参、建墓行為の調査を通して、生活意識、民族意識の変化を歴史条件との関連で解明した。(3)海女の出稼ぎについて生活史調査がなされた。3.比較対象として韓国のソウル、釜山、および米国における済州島山身者団体の調査を行った。(1)ソウル、釜山では、大阪・東京と同じく里単位での同郷縁が人的移動および生活形成に重要な機能を果たしていた。(2)しかし米国では、道レベルのみで協会はあるものの、移動、生活形成においては二義的な役割しか果していない。4.現在、提出された諸論文の共同報告書公刊のための編集作業に当たっている。