研究課題/領域番号 |
07044036
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究分野 |
教育・社会系心理学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北山 忍 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (20252398)
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研究分担者 |
マルカス ヘゼル スタンフォード大学, 心理学部, 教授
唐澤 真弓 白百合女子大学, 文学部, 助手 (60255940)
MARKUS Hazel R. Stanford U., Dept.of psychology, Professor
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研究期間 (年度) |
1995 – 1997
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キーワード | 自己 / 文化 / 日米比較 / 対人関係 / 会話 / 社会的認知 / 発語意図 / 自己向上と自己批判 |
研究概要 |
本研究のプロジェクトでは、自己概念と対人関係のパターンの相互規定性に焦点をあてた一連の日米比較研究を実施した。これらから得られた主要な理論的、実証的知見は次の3点にまとめることができる。(1)友人間の会話パターンを日米で分析し、米国においては、相手に対する肯定的コメントが交わされる頻度が。否定的コメントが交わされる頻度にくらべ、非常に高いが、日本ではこの傾向はかなりやわらぐ、さらに、米国では聞き手は肯定的なコメントは「本心」であると推測しがちであるが、日本では否定的コメントのほうをむしろ「本心」であると知覚しがちであることを示した。(2)米国における自己概念は、非常に肯定的意味を含み、さらに、より重要なことに、このような自己概念は、他者からの期待に合致したものであると認知されているが、日本においては、自己概念の肯定度はかなり低く、その結果、周りからの高い期待との間にかなりのギャップがあると知覚されている。(1)と(2)の知見は、先行研究で明らかになっていた、欧米における自己高揚的バイアスと日本における自己批判的バイアスが頑健であることを示すと同時に、これらの社会・集合的基盤を明らかにした点で重要である。さらに、(3)会話の情報処理についての探索を通じて、最終的に遂行した感情的発話の処理の実験室実験では、米国においては、言語情報が非常に優先的に処理されているが、日本においては、声の調子の情報がより中心的になっているという知見が得られた。この結果は、「言ったことは言おうとしたこと」であるという暗黙の仮定の下に会話がなされる欧米文化と、「言おうとしたことは、しばしば言わなかったこと」とする暗黙の仮定のもとに会話が進行する日本文化という対比を反映しているものとして解釈できる。さらに、従来の自己研究で用いられてきた言語中心的研究手法が、欧米での方が日本でよりもより妥当性を持っているかもしれないことを示しており、将来に向けて新たな課題を呈示していると考えられる。
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