研究分担者 |
LEARNED John ハワイ大学, 天文物理教室, 教授
上原 貞治 高エネルギー物理学研究所, 助手 (70176626)
府川 峯夫 高エネルギー物理学研究所, 助教授 (40044763)
林野 友紀 東北大学, 理学部, 助手 (10167596)
山口 晃 東北大学, 理学部, 教授 (60004470)
北村 崇 近畿大学, 総合理工研究所, 教授 (10013426)
小早川 恵三 福井工業大学, 教養部, 教授 (00031287)
三井 清美 山梨学院大学, 経営情報学部, 助教授 (80013340)
岡田 淳 東京大学大, 宇宙線研究所, 助手 (90013341)
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研究概要 |
◎観測装置の準備; 観測装置は24個の光検出器(Optical Module)と1個の信号前処理器(String Controller)を取り付けたストリング9本で構成する。OMは15吋口径の光電子増倍管(PMT)を附属電子回路と共にガラス製の耐圧容器に収めたものである。個々の電子回路はcpuを内蔵し、高電圧の値や波高弁別の閾値などの遠隔制御、電子回路の機能の遠隔監視、が可能である。SCは24個の光検出器から出力されるパラレル信号をディジタル化し、シリアル信号に変換する機能をもつ。日本グループにより用意されたOMと米国グループにより準備されたSCを用いて3本分のストリングの組立てが図られた。この内1本のストリングについて長期通電テストが行った後、宇宙線及び発光器を用いた波高及びタイミングの較正作業を行った。 2年前、最初の一本のストリングを深海現場に設置し動作させる実験を行った。その際、SCに用いた多数個の水中コネクターの中に1個の不良品がまぎれ込み苦い失敗を経験した。又、OMのコネクター取り付け部位に不具合のあるものが見つかった。これらに対処するため、コネクターに袴を追加してシール性能を向上させ、耐圧容器内のリ-クセンサーの感度をあげ、コネクター選別方法を厳しいものに改めた。他方、回収されたSCの耐圧容器の表面に電蝕の兆候が見られたため、容器の材質をAlからTiに替えて製作し直した。これにより容器の耐圧性能も向上した。 ◎シミュレーション; ニュートリノ事象が生起する頻度は非常に少ない。従って、観測装置が検出する信号から疑似信号を取り除く手法を確立しておく必要がある。ニュートリノ事象はニュートリノ反応によって発生したミューオンが放射するチェレンコフ光によって検出される。海水中で光を放射するものには放射性同位元素、生物、大気宇宙線があり、これらの光が疑似信号の発生源になる。前二者については、信号のタイミング情報を使ってその影響を比較的容易に除去することができる。大気宇宙線中のミューオン成分は海中深くまで降り注ぎ、疑似信号を発生させ得る。大気ミューオンの強度は天頂角に強く依存し、角度と共に減少する。他方、ニュートリノ事象は天頂角に依存しない。そこで粒子の入射天頂角を大角度(θ≧80゚)に限ることにより、大気ミューオンの影響を抑える。但し、ミューオンの飛跡に沿って発生するカスケード粒子が放射するチェレンコフ光は入射粒子からの信号のタイミング情報を狂わせる。又、チェレンコフ光の走行距離が長くなると、海水中で散乱を受けて粒子の入射角を見誤ることになる。観測装置の性能シミュレーションを行い、これらの影響の大きさを見積もり、疑似信号を除く有効手段を検討した。 ◎深海実験のためのリストラ; 深海で実験を行う研究は本実験に先立って観測装置の耐圧性能を十分に確認しておくことが必要である。コネクター等の小さい部品の性能試験を行う装置は持っているものの、光検出器や信号前処理器など、大きいものをテストする自前の設備がなかった。そこで内径2'x長さ10'、運用最高圧力10,000psi(水深6,600m相当)の圧力テストタンクの製作に取りかかった。 現在深海現場と陸上の基地との間には電力・光ファイバー複合ケーブルが敷設されている。深海現場にはケーブルの端末である中継器が設置されている。観測装置を所定の場所に建設するには、深海現場にストリングを降ろし、ストリングと中継器とをケーブルで接続する。この作業を行うには深海ロボットを必要とする。深海ロボットは装置が完成した後にも、万一故障が発生した時には装置の診断や修理を行うために必要となる。しかし、5,000m水深で作業のできるロボットの数は非常に限られている。そこで、十分な機能をもち且つ簡便な深海ロボットを製作するための検討を行った。
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