研究分担者 |
YAZICIーCAKIN カキン オー ボアージチ大, 助手
MALIN S.M.C. ボアージチ大, 教授
PINAR A. ボアージチ大, 助手
UCER S.B. ボアージチ大, 助教授
GURBUZ G. ボアージチ大, 教授
ISHIKARA A.M ボアージチ大, 教授
松島 政貴 東京工業大学, 理学部, 助手 (20242266)
大久保 修平 東京大学, 地震研究所, 助教授 (30152078)
伊東 明彦 宇都宮大学, 理学部, 助教授 (70134252)
大志万 直人 京都大学, 防災研究所, 助教授 (70185255)
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研究概要 |
トルコ共和国の北部を東西に走る北アナトリア断層帯は,地震予知において非常に重要ないわゆる地震空白域を有していることから,地震予知研究にとって格好のテストフィールドと考えられている.とくに,その西部域に存在する地震空白域は国際的にも注目されており,ユネスコから国際地震予知実験場の一つとして指定されている.本研究の目的は,このテストフィールドにおける地震予知基礎研究の一環として地震観測を行ない,微小地震活動の現状を把握するとともに,地震発生様式を詳細に調べ,近い将来に発生すると考えられている比較的大きな地震にとの関連を明らかにすることである.さらに,地磁気及び地電位の連続観測を行なうことにより,異常現象の検出,さらにそのメカニズムを明らかにすることをも目指している. (1)地震観測に関しては,空白域の微小地震活動様式を調べることを目的としたテレメータ方式による地震観測網を設置し,概ね順調に地震観測が行われていたのであるが,いくつかの観測点では計器の不調のため,その修理に多大な労力を必要とした.また,これまでの観測網では地震空白域内の微小地震検知能力が不十分であったため,さらに観測点を増設する必要があった.現在では10点で連続観測が行なわれており,空間的に均質な地震活動が把握できるようになっている. 現在,地震データの解析を精力的に行なっているところであるが,まとまった成果として発表するに至っていない.ただし,これまで地震が少ないと云われていた活断層近傍にも微小地震が発生していたり,ある特定の場所のみに地震が多発するという特徴的なパターンが見つかるなど,貴重な情報が得られている.さらに,波形データの解析も予定しており,活断層近傍の地震発生様式を調べることになっている. (2)地震予測においてもっとも重要とされる地殻ひずみの観測も手掛けているが,予算の関係で10m程度のボーリングができなかったためにごく浅い地中にひずみ計を埋設し,ひずみの連続観測を行なっている.したがって温度変化による影響を避けることができず,現在何とか温度変化の影響の除去法を検討している段階である. (3)地磁気,地電位の連続観測も継続している.地電位観測では電極の動作不良からノイズの多いデータとなっていたが,新たな電極を埋設し直してからは良好なデータとなっている.これまで,地震に先行すると思えるような変化がいくつか検出されている.ただし,地磁気にはノイズレベルを越えるような大きな変化は観測されていない.これらのことから,地電位の異常は観測点の近傍の活断層に原因があり,恐らく地下水の流動に関係しているものと思われる. (4)地震の震源過程の研究を進めているが,本研究の観測地域となっている地震空白域で起こった最後の大地震である1967年ムドゥルヌ地震の震源過程を調べた.この地震は北アナトリア断層に沿う典型的な横ずれ断層と思われていたが,実際には震源過程は複雑で,正断層成分を持つ領域,逆断層成分を持つ領域などが混在していることがわかった.とくに,この地震の震源域の西端はその隣りの地震空白域との関連で非常に重要であるが,ここでは正断層成分が卓越していることがわかった.この情報は,近い将来予想される地震の発生様式を推定する際に非常に重要となる.現に,予想される震源域は北側の活断層帯というよりは,南側のイズニック-メケジェ断層になる可能性が高いことが示唆されている. この地震の他にもトルコ全土で起こった20個程度の主な地震をとりあげ,それらの震源過程を調べている.その結果,北アナトリア断層の全体的な挙動がテクトニクスの観点から理解できるようになった.このような成果はそれぞれの地域の地震の発生様式を理解するのに必要な情報をも提供しており,将来の地震発生の予報にも役立つことが期待される.
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