研究課題
主として、波長1.3-4.2ミクロンにわたって分光および分光偏光観測を行なった。対象天体は銀河面で赤化をうけた巨星・超巨星と星形成領域の若い天体・暗黒星雲の背景の天体である。銀河面の天体は波長1ミクロンまでのサーベイで見つけられていたもので、これまで詳細な性質は全くわかっていなかった。これらの天体のスペクトル型を同定し、その元来の色と観測データを比べることにより、星間減光の量を見積もった。その結果、かなりのものが元来赤いM型星がわずかの赤化を受けたにすぎないことを見いだした。これは、星間物質の研究を進める上で不可欠な背景光源を探索するのに波長1ミクロン程度までの観測では不十分なことを、初めてはっきりと示したものであると言えよう。この赤化量と星間偏光の量を比較すると、従来言われていたような「赤化や減光はひきおこすが偏光に寄与しない星間微粒子」の存在に疑問を呈することができると考えている。数多く観測した天体の中から選び出したものをワイオミング大学天文台で偏光観測したところ、大きな偏光を持ち、しかも3ミクロン帯に氷の吸収にともなう偏光の超過を示す天体を発見した。また、星形成領域では氷の吸収にともなう偏光の超過を数多くの天体で見いだした。この中には単純な星間偏光のメカニズムでは説明できそうにない波長依存性を示す天体もあり、これまで観測されていた少数の明るい天体が必ずしも星形成領域を代表するものではないことがわかってきた。今後さらに氷の吸収の波長域での観測を進め、氷を含む星間微粒子の空間分布・サイズ・組成などにせまりたいと考えている。
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