研究課題
星形成のメカニズムを理解することは、現代天文学における最も重要な課題の一つである。本研究は、(1)名大4メートル鏡を用いた^<13>CO、C^<18>O分子スペクトル線による高密度ガス塊の詳細観測、(2)光学観測による分子雲の距離測定と若いHα輝線星探査を国際協力のもとに実施し、統計的手法により星形成過程の観測的描像を確立することを目指すものである。当初、北天における星形成領域を中心に研究を進める予定であったが、今年度、急遽4メートル望遠鏡の南米チリ国移設費が認められたため、南天に観測領域を広げることにより本研究の目標を達成することとした。南米における観測拠点はチリ国ラスカンパナス天文台である。チリからは天の川銀河に最も近い系外銀河であるマゼラン雲をはじめ、おおかみ座・カメレオン座等の星形成領域が観測でき、北天のみの観測に比べ、星形成領域の統計的サンプルが質・量ともに飛躍的に向上することが期待される。本年度は、望遠鏡受け入れ先のチリ国ラスカンパナス天文台およびその本部である米国カ-ネギ-研究所天文台と数回の打ち合わせ後、移設作業を完了した。来年度、南天における星形成領域の具体的な掃天観測を行なう。同天文台は年間70%の晴天率をほこる世界屈指のサイトであり、1年間で日本における数年分のデータの取得が可能となる。またこれと並行して、ハンガリーのコンコリ天文台において可視光域の恒星計数解析による分子雲の距離決定も行なった。同解析は、高い確度で分子雲の物理状態を決定する上で極めて重要である。さらに、これまでコンコリ天文台の研究者らと共同で進めてきたセフェウス座、カシオペア座他の^<13>CO、C^<18>O分子雲の観測結果を整理して論文にまとめた。研究は順調に進んでおり、南天での観測実現により、初期の目標をはるかにこえる成果が得られると期待される。
すべて その他
すべて 文献書誌 (7件)