研究分担者 |
LIU Z. 米国, 公衆保健局・防疫センター, 研究員
BARR J.B. 米国, 公衆保健局・防疫センター, 研究員
SIRIMANNE S. 米国, 公衆保健局・防疫センター, 研究員
MOSBACH K. スウェーデン, ルンド大学, 教授
BUSZEWSKI B. ポーランド, コペルニクス大学, 教授
PATTERSON D. 米国, 公衆保健局・防疫センター, 室長
細矢 憲 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助手 (00209248)
老田 達生 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助教授 (90152032)
寺部 茂 姫路工業大学, 理学部, 教授 (50115888)
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研究概要 |
本共同研究においては、ダイオキシンやPCB類を含む排水の処理のための光分解反応媒体、ダイオキシン類の精密分離媒体、及び血清の分析のための自動化前処理媒体等の開発と、その適用条件の検討を行った。これらの媒体となる液体クロマトグラフィー(HPLC)充填剤、カラム、及び動電クロマトグラフィー(EKC)用擬似固定相を、コペルニクス大学及びルンド大学の研究者の協力の下に、京都工芸繊維大学、及び姫路工業大学において調製し、これらを使用して(1)水系廃液中のダイオキシン及びPCB類の連続的回収濃縮と光分解反応、(2)HPLC系への血清の直接注入による除タンパク質と、コプラナPCB、非平面的PCB、ダイオキシン等の相互分離によるGC/MS分析のための試料調製法の自動化、ならびに(3)分子形状識別能力をもつHPLC充填剤、及びEKC擬似固定相による、疎水性環境汚染物質の精密分離法の開発などのための高毒性物質関連の実験をアメリカ合衆国防疫センター(CDC)において行った。 (1)有機溶媒-水混合溶媒中に存在するダイオキシンやPCBは、その溶液をアルキル化シリカゲルを充填した石英管カラムに流すことにより、アルキル化シリカゲル表面に吸着、濃縮することができた。溶媒中の水含有量が一定量以上であれば、PCBやダイオキシンはカラム内をほとんど進行せず、カラム外側からの紫外線照射により容易に分解され、親水性の分解生成物のみがカラムから溶出された。高毒性のヘキサクロロ及びペンタクロロ置換コプラナPCBは速やかにほぼ単一の経路で分解された。ダイオキシンについても、高毒性をもたらす2,3,7,8位の塩素が優先的に分解された。焼却によるダイオキシンやPCB類の処理については二次的な汚染が懸念されているが、光分解法は水系廃液にも適用でき、また、生成物を制御できる点で優れている。今後の課題は、生成物の詳細な同定と、光分解反応のスケールアップである。 (2)血清試料からタンパク質を除去し、血清中の疎水性環境汚染物質を有機溶媒中に回収するためのHPLCによる試料前処理については、通常のC18型カラムを用いた場合、吸着されて固定相に残存するタンパク質によるキャリーオーバーが大きく、外表面親水性、内表面疎水性の浸透制限型充填剤の使用が必須であることが明らかとなった。通常の体内レベルのPCB類のGC/MSによる定量は、2cm径、25cm長程度の浸透制限型カラムを使用して、1m1以上の血清の処理によって可能となる。一方ダイオキシン、PCB,多環芳香族化合物など、多種類の汚染物質相互間のグループ分離は、多環芳香族基結合型シリカゲルを用いて可能とすることができた。除タンパク質用の浸透制限型カラムと、グループ分離用の形状識別カラムとのカップリングによる血清試料についての前処理の真の自動化が次の課題である。 (3)分子形状識別能力をもつEKC用擬似固定相としてアルキル化スターバーストデンドリマ-及びアルキル化ポルアリルアミンを合成し、これらを用いて有機溶媒-水混合系の全領域で電気永動に基づく多環芳香族化合物の分離を可能とした。この領域での次の課題は、高分子型擬似固定相を用いるEKCと、マススペクトルとの結合による分離の高速化と検出能力の大幅な向上である。 この他、クロマトグラフィー系の分離性能を極限まで高めることを目的として、超高理論段数の発生とその応用の試みとなる、多孔性シリカ連続体に基づくHPLC用カラムの調製と、同位体の作るキラリティの識別を試み、初めてこれらの実現に成功した。このような環境汚染有機化合物の分離、分析、分解法へのクロマトグラフィー的アプローチにより、汚染の計測、正当な評価とともに、安全な無害化処理が実現に近づくものと期待される。
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