研究課題/領域番号 |
07044087
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
都 福仁 大阪大学, 大学院・理学研究所, 教授 (10000837)
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研究分担者 |
MORIN P. フランス国立科学研究センター, ネール研究所, 研究部長 教授
PHILLIPS N.E カリフォルニア大学, バークレー分校, 教授
MYDISH J.A. ランデン大学, カメリンオネス研究所, 教授
石川 征靖 東京大学, 物性研究所, 教授 (70159705)
大貫 惇睦 大阪大学, 大学院・理学研究所, 教授 (40118659)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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キーワード | Heavy fermion / Kondo effect / SDW / Quadrupolar order / INVAR / Specific heat / Resistivity / Neutron Scattering |
研究概要 |
(1)ウラン化合物の近藤効果に関する研究 CeRu_2Si_2のCe原子は結晶中でCe^<3+>の価数を持つ。スピンは半整数で、Kramers doubletは低対称の結晶場中で分裂しない。このようなKramers doubletの存在する系の低温の重い電子状態は次に述べるように近藤効果によるものとして、良く理解されている。 しかしウラン化合物では結晶中でのウランの価数はCe原子ほど明確ではない。Ce同様に5f電子は6s^26p^6の閉殻で遮蔽されているが、4f電子に較べ、5f電子の拡がりは大きい。このため、ウランの価数は結晶中で3価4価の混ざった状態になる可能性が高い。URu_2Si_2は反強磁性オーダーと超伝導の共存する化合物であるが、その磁性、特にウランの5f電子状態は十分に理解されていない。今回の研究では、LaRu_2Si_2のLaを一部Uで置換したU_xLa_<1-x>Ru_2Si_2(x=0.05、0.07、0.15)の磁性の研究を行った。帯磁率(0.3K〜300K)磁化(T【greater than or equal】2K、H-0〜30T)及び比熱(2K【less than or equal】T【less than or equal】50K)の測定を行い、その結果を解析し、U_xLa_<1-x>Ru_2Si_2に近藤効果による局在磁気モーメントのscreeningが存在することを明らかにした。それと共に、Pr_xLa_<1-x>Ru_2Si_2の磁性と比較研究し、近藤効果による局在磁気モーメントのscreeningの生ずる場合と生じない場合原因をf電子の結晶場分裂の定量的解析から明らかにした。U_xLa_<1-x>Ru_2Si_2中のUの5f電子状態は、URu_2Si_2の場合とほぼ同一状態であると思われる。100K以上の高温の帯磁率の解析からU^<4+>の価数であり、non-Kramersの5f^2の全角運動量の基底状態はΓ^<(1)>_<t5>(2重)またはΓ^<(2)>_<t5>(2重)であり、励起状態にsingletΓ^<(1)>_<t1>またはΓ^<(2)>_<t1>が存在することが得られた。Γ^<(1)>_<t5>-Γ^<(1)>_<t1>間のエネルギー間隔は比熱のSchottky異常から60Kとえられた。また低温比熱の測定による電子比熱計数γ
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は130mJ/mol-K^2であり、URu_2Si_2の場合とγの値及びSchottky異常とも一致している。高温のCurie-Weiss則で表される帯磁率は2K以下一定になりPauli常磁性を示し、比熱測定からのγの値と合わせ、低温になると局在モーメントの消失によるフェルミ液体の出現を示している。この事は強磁場測定の研究からも明らかにされた。300Kと77Kの磁化は結晶場理論による局在モーメントで説明できるが、4.2Kの磁化はこの理論値より大幅に小さく、磁気モーメントの現象が示された。4.2Kの30テスラ迄の磁化測定の結果は帯磁率同様不純物近藤理論により近藤温度T_K【approximately equal】13Kと求められる。この値は比熱から評価された値T_K【approximately equal】67Kと異なっているが、これらの解析は、S=1/2のdoublet stateの近藤理論による解析であり、U_xLa_<1-x>Ru_2Si_2はイジング的な、non-Kramers doubletであることが原因であろうと思われる。今回の研究では異なる局在モーメントのscreeningにΓ_5、Γ_1の3つの準位が基底近くに存在し、<Γ_5|J_z|Γ_5>≠0、<Γ_5|J_<x,y>|Γ_1>≠0を満たしている必要があることを実験的に示した。 (2)遍歴的重い電子のスピン密度波の関する研究 CeRu_2Si_2は常磁性であり、反強磁性及び超伝導のような相転移は観測されていない。Ceの4f^1電子は高温で局在し、低温では近藤効果によりPauli常磁性になる代表的な重い電子系化合物である。しかし、この物質にわずか数%RhとかLaを加えると簡単に反強磁性相転移を示す。この理由は知られていなかったが、今回中性子散乱実験、電気抵抗、帯磁率、比熱等の測定を通じ、スピン密度波が伝導バンドのネスティングにより、生ずることを明らかにした、ネスティングによる磁気モーメントの変調には主としてRuのd-バンドが主要な役割を担っていることを明らかにした。CeRu_2Si_2の低温磁性の特徴は単にフェルミ液体的パウリ常磁性であるだけでなく、多くの反強磁性short range orderが競合しながら時間的、空間的に揺らいでいることである。CeRu_2Si_2の中性子散乱実験により、グルノ-ブルで観測されていたq(0.3、0、0)、q(0.3、0.3、0)のshort range orderの他にq(0、0、0.35)、q(0、0.5、0.5)のshort range orderが新たに観測された。また、q(0.3、0、0,)、q(0.3、0.3、0)のshort range orderは、逆格子空間の一点で中性子散乱強度のpeakを持つというよりは、山脈の連なりのように逆格子空間内で拡がっていることが明らかになった。a^*b^*面とa^*b^*面の観測のみであるが、この2面のBrillouin zone内の観測でも多くのshort range orderが明らかとなった。CeRu_2Si_2では単に近藤効果で、局在モーメントが消失しているだけでなく、わずかに残っている小さい磁気モーメントの何種類かのshort range orderが競合して反強磁性相転移の出現を防いでいる。このため、周期律表のRuの右隣のRhでRuを一部置換し、d-電子数を増加させると、c^*のネスティング条件を満足し、q(0、0、k)(ただし、15%のRh濃度の時k=0.42)の反強磁性長距離秩序が生じる。Ce(Ru_<1-x>Rh_<2x>)_2Si_2中Rh濃度を増加させると逆格子空間のZ点を中心とした主にRuの4dバンドのholeが小さくなり磁気波数ベクトルq(0、0、k)のk値が大きくなる。ネスティングの生ずるバンドの確定は出来ないが、Zを中心にRuの4dバンド(主に)とCeの4fバンド(主に)のネスティングの可能性が高い。CeRu_2Si_2のバンド計算ではk=0.2であり、観測されている0.35よりかなり小さいが、この仮定により、中性子散乱及び電気抵抗の異常等定性的に説明できる。 またCe_<1-x>La_xRu_2Si_2の場合にはq(0.3、0、0)の磁気波数ベクトルが安定し、La濃度の変化によらず、q一定である。この事はやはりZ点を中心にしたa^*軸方向のRuの4d holeバンドのフェルミ面のネスティングとして定性的にも定量的にも理解される。 これら混晶の単結晶の電気抵抗pはCe(Ru_<1-x>Rh_x)_2Si_2の場合反強磁性転移温度T_Nでc軸方向には異常を示さずT^2に比例した電気抵抗でフェルミ液体の存在を示す。Ce_<1-x>La_xRu_2Si_2の場合は逆にa軸方向に異常を示し、c軸方向には異常はなくT^2に比例している。これらの結果は上に述べた、ネスティングモデルにより、よく説明される。 この様に、重い電子のスピン密度波の存在とバンド計算と対応させ異方的なバンドキャップの発生を説明し、実験的に明らかにしたのは初めての例である。 隠す
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