研究課題
アジア・モンスーン域での多島域に発達する積乱雲はモンスーン雨をもたらす雲群とは異なるが気候に重要な熱や水蒸気の高層への輸送に大きく貢献していることが考えられている。冬のモンスーン雲群の接近少し前、ダ-ウィン沖、Melville島上に巨大積乱雲(Hector)が発達する。オーストラリア・気象局ではこのHectorをモンスーン域、多島域の代表的な積乱雲と考え、Maritime-Continent Thunderstorm Experiment (MCTEX)を計画した。我々九州大学グループはTRMMプロジェクトの一環として平成7年11月15日より約1ケ月共同観測に参加、観測期間中降水粒子ビデオゾンデ計16台を飛揚した。Melville島はTRMMのグランド・トル-スの地点でもある。Melville島にはこの観測期間中多くの大学・研究所が大型観測装置を持ち込んだ。それらの主な装置はドップラーレーダ、ウインドプロファイラー、エ-ロゾンデ等である。Hector直下では約2時間激しい雷と雨の連続である。オーストラリア気象局による現在までの研究で降水プロセスはHector雲の組織化に直接関与していることが示唆されている。今回、降水粒子ビデオゾンデで始めてHector雲内の降水粒子空間分布が知られた。特に興味のあることは直径7mmもの大きい凍結氷の形成と上層での時には1cm^3当たり10個もの氷晶の出現である。観測を通して上層での霰形成の活発さが初めて明らかになったが、大きい凍結氷形成には上層からの霰が下層の過冷却水滴の効率的捕捉が行われていなければならない。他共同観測データ交換を通してHector雲内の流れの場と降水機構との関連が更に明らかになろう。3月25日にはオーストラリア・メルボルンで最初のデータワークショップが開催され、我々グループも参加、今後のデータ解析についての詳細な打ち合わせが行われる。
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