研究概要 |
1)構造の設計,制御と評価 : 芳香族ポリイミドフィルムの内,カプトンフィルムについて,その構造・組織および電磁物性(残留抵抗比,磁気抵抗およびホール係数)の処理温度に伴う変化を詳細に追跡した.2200℃以下の熱処理によっては,構造の発達はかなり強く抑制されており,コ-クスなどの易黒鉛化性炭素よりも劣っている.しかし,2300℃以上では急激に構造が発達し,極めて高い結晶性が得られることを明らかにした.これらのポリイミドフィルムから得られたグラファイトフィルムは現在モノクロメータなどとして実用化されている高配向性熱分解黒鉛に匹敵する.また,ユ-ピレックスフィルムに付いては,3000℃への熱処理によってもグラファイト構造の発達はほとんどみられず,フィルムの厚さ方向での構造傾斜が認められた. 2)機能の制御と評価 : グラファイト構造への変化の段階で,イミド分子中に存在した窒素が2100〜2200℃の高温まで残留し,グラファイト構造の発達を抑制している.この残留した窒素は炭素の六角網平面中に炭素原子を置換固溶していることをXPSの詳細な解析から明らかにした.このことは,窒素原子のグラファイト構造中ヘの置換固溶が可能であることを示唆している. 2300℃付近での窒素の放出は急激で,フイルムを変形させる.従って,高結晶性のグラファイトフィルムの調製には,2200℃付近にいったん保持し,充分窒素ガスを放出させることが必須要件である. 3)機能の拡張 : ポリイミドフィルムの合成段階で,ボロンを添加することによって,そのド-ピングを行うとともに,その化学結合状態をXPSによって倹討した.ボロンはポリイミド分子の熱分解の過程でその窒素と反応し,B‐Nのペア-を作って炭素六角網面中に存在することが明らかとなった.さらに,同様な手法で鉄のド-ピングを検討した.ポリイミドの炭素化の段階で鉄原子が凝集し,鉄微粒子として分散したカーボンフィルが得られることを,XRDおよび磁性測定から明らかにした.
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