研究課題
3か年継続研究の2年度として日本チームが3班に分かれてフィンランドを訪問し、Helsinki、Lappeenranta、Kivijarvi、Runnaa、Kuopio、Vanhakaupunki、Janislinna、Kaunissaariを移動して視察・調査した結果日本との対比において、以下の状況にある事を理解した。1.Lappeenranta、Kuopio、Janislinnaの地下水人工涵養施設の視察・調査。(1).岩盤が地表近くまで迫っており、地層が極めて単純である。(2).日本の複雑な地層状況とは異なり、簡単な物理探査で地層を読み取り、涵養水の行方を読みとる事が出来る。(3).流れの下流が正確に判断する事が出来るのであるから、流れを伴う帯水層蓄熱、即ち帯水層流動蓄熱も可能である。現に、Lappeenrantaでは、冬の冷水涵養の影響で5月上旬、揚水温度は4.0℃を示している。(4).帯水層は氷河による御影石粉砕エスカ層である。透水係数が大きく、岩盤の窪みを辿り、下流に流れる。流れは周りをシルトで囲まれたチューブ状の流れである。時間経過に伴って、有機質の吸着が進行しチューブの閉息分岐が繰り返され、毛細管のように発展・成長しているものと考えられる。(5).遠い将来、流れの閉塞が起き、嫌気性地層が形成され、嫌気バクテリアの活動により、PH値が降下、鉄バクテリア・マンガンバクテリアの活動を促進すると考えられる。フィンランドでも鉄・マンガンの含有量の多い帯水層が随所に認められる。これは太古の時代に有機物のフィルターとして貢献したエスカ層ではないかと推論される。2.ヘルシンキ市の水源ヘルシンキの水道水源は120km離れたPaijanne湖である。質・量ともに申し分が無い。隧道を穿ち、ヘルシンキまで導水している。途中、Korpimakiで分水し、エスカ層による地下水人工涵養を行い、良質の地下水として水道水源に直接利用している。凝集剤使用や塩素殺菌を行わないので極めて良質な水道水を供給することが出来る。以上総合して、フィンランドの環境と、アジアモンスーン地帯にある日本との間にある著しい差異を体で認識した。気象特性、大陸岩盤と火山国特有の地形、河川水質、帯水層及び地下水の相違である。これらは、境界条件の打ち合せに非常に有益である。
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