研究課題
本年度は、中国回収型衛星を用いたGaSbの評価に関する昨年度までの実験的研究を計算機シミュレーションを用いて解析した。実験結果は次のようにまとめられる。1)宇宙ではGsSb融液はアンプル管に接することなく浮遊している。2)宇宙で成長した結晶部分で不純物縞が消失している。これは宇宙で自由表面があったにもかかわらずマランゴニ対流があったにせよ振動流にはならなかったことを示す。3)空間分解フォトルミネッセンスの結果によると不純物としてドープしたTeは宇宙で成長開始時点で急激に下がるが、その後急速に回復する。この振舞は融液中のTeの輸送が拡散によって支配されていいることを示す。従って実験によると宇宙で成長した時自由表面があるにもかかわらず定常・非定常マランゴニ流とも停止したように見える。そこで、何枚マランゴニ流が停止したのかを探るため対流シミュレーションプログラムを用いGaSb融液の流れを調べた。第1のモデルは高温および低温壁を持つ平行平板状融液で平板の一方が自由表面でもう一方の平板および低温・高温壁では融液はすべらないとする境界条件のもの、第2のモデルはそこに不純物を加えたもの、第3のモデルは高温および低温壁を持つ円柱状の融液で円柱表面が自由表面のものである。低温壁の温度を融点に固定し高温壁の温度をそれより0.1〜10度高いものとしシミュレーションを行った。又、微小重力のシミュレーションなのに重力加速度はないものと仮定した。第1の平板モデルと第3の円柱モデルによる流れのシミュレーション結果を円柱モデルの中心を平板モデルの固定平板に対応ささて比較すると、かなり流れは類似していることがわかった。しかし、円柱の中心部分では流れが存在するのに対し平板固定境界部分ではなくなるので、その部分のみが若干異なる。次に第2のモデルを用いてGaSb融液内のTe不純物分布をシミュレートした。低温壁におけるTe濃度を与えてそれがどのように融液内に分布するかを調べるとにより境界層の厚さを見積もった。それによると高温壁と低温壁の温度差を0.1℃としたとき境界線の厚さは0.1mmの程度でこれを純粋拡散モデルと比べると比較的良い一致が得られる。このことは、マランゴニ対流は存在するもののその効果はあまり強くないということを意味する。しかし、高温壁と低温壁の温度差の見積にはまだ問題がありこのことを解決する必要がある。
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