研究課題
1.現地へ研究者を派遣中に数度に渡って大規模な粘性土石流が発生した。これらは典型的な間欠性を有するものであったので、その流下時間間隔、流速や流動時の特性が詳細に観測できた。とくに、重要な発見は、従来の粘性土石流の流動モデルが仮定している降状応力を保持しているような流体では流動の表面に剛体のような挙動をする栓流の部分が存在しなければならないのに、実際の流れではそのような部分が全然存在していないことである。このことは従来の流動モデルが正しくないことを示唆しており、新しい流動理論等への足がかりが得られた。2.土石流発生の前後に、土石流流下域、堆積地域の代表的河道区間について、詳細な地形測量を行い、土石流発生前後の地形変動の実態調査を行った。3.土石流発生までの降雨状況を流域内に配置した自記雨量計の記録を用いて把握した。流域の標高によって雨の降り方が相当異なっており、土石流予知に対して相当困難があることが判明した。4.現地流域の一小支渓において、人為的に土石流を発生させ、その流動および堆積過程の観察と構成材料の分析を行った。人工土石流の粒度構成は天然の土石流のそれとほとんど同じであり、土砂濃度に関してもほとんど同じであった。しかし、流動状況は実物と実験のものとではかなり異なっており、現象の規模が流動機構に大きな影響を与えていることが判明した。なお、この実験は日本側と中国側の研究者が共同で行ったものである。5.別途、実験水路を用いて、粘性土石流の流動機構に関する基礎的な研究を行った。