研究分担者 |
BRUNSCHWIG B ブルックヘブン国立研究所, 化学部門, 研究員
FUJITA Etsuk ブルックヘブン国立研究所, 化学部門, 研究員
CREUTZ Carol ブルックヘブン国立研究所, 化学部門・部門長, 主任研究員
SUTIN Norman ブルックヘブン国立研究所, 化学部門, 主任研究員
藤原 宏昭 大阪大学, 工学部, 博士課程後期日本学術
細川 浩司 大阪大学, 工学部, 博士課程後期日本学術
末延 知義 大阪大学, 工学部, 助手 (90271030)
村越 敬 大阪大学, 工学部, 助手 (40241301)
伊東 忍 大阪大学, 工学部, 助教授 (30184659)
和田 雄二 大阪大学, 工学部, 助教授 (40182985)
福住 俊一 大阪大学, 工学部, 教授 (40144430)
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研究概要 |
p-terphenylを光増感剤とし、4種類の大環状ポリアミンコバルト錯体を助触媒とした水および二酸化炭素の光還元システムについて、反応生成物分析を行い、特に助触媒の幾何学的構造に伴う光還元活性ならびに生成物選択性の変化について検討を行った。 4種の錯体から特にCoIHMD(HMD=5,7,7,12,14-hexamethyl-1,4,8,11-tetrazazcyclotetr adeca-,4,11-diene)を助触媒とする系について、レーザーフラッシュホトリシスを用いて、詳細な反応機構の検討を行った。 コバルト錯体分子へのチメル基導入に伴い、還元電位の正側へのシフトが観測され、同時に二酸化炭素光還元活性は低下した。これは還元力の低下および二酸化炭素の取り込みに対する立体規制の両者が関わっているためと考えられる。 p-terphenylのラジカルアニオンから錯体への電子移動が確認され、その速度定数を求めることができた。コバルトが1価に還元された状態では二酸化炭素の配位は解離と平衡にあり、その解離定数を決定した。これらの結果から、金属錯体の構造が変化した場合、電子移動速度はあまり大きな影響を受けないが、二酸化炭素の配位の強さが規制を受けており、これが光還元活性を制御する因子であることがわかった。 ここで得られた結果は助触媒としての大環状アミンコバルト錯体には二酸化炭素の配位を妨害するような置換基の導入が好ましくないことを示している。従って、以後、助触媒の設計による活性の増加を検討する場合には、配位子のアキシャル位への置換基導入ではなく、中心金属など別の観点からのアプローチが必要と思われる。 二酸化炭素の有機化合物への電気化学的付加反応に対する触媒として知られているニッケル錯体をp-terphenylを光増感剤とする系での助触媒として用いる系の検討を行った。ニッケルサイクラムを用いた場合では、コバルトの場合に進行したCO_2の還元が起こらず、水素発生のみが観察された。レーザーフラッシュホトリシスによる実験であhp-terphenylの存在しない条件でも、CO_2存在か313nm光照射でNiL(CO_2)^+を含むNi(I)が生成した。トリエチルアミン(TEA)を含むアセトニトリル溶液中でNi^<II>L_2^+はCO_2と相互作用し、Ni^<II>L(TEA)(CO_2)_2^+を生成した。NiL(CO_2)^+は配位圏のTEAからの光誘起電子移動により生成すると考えられる。現在、CoとNiサイクラムの光化学の相違について検討中である。 半導体超微結晶(TiO_2,ZnO)/光増感色素(Coumarins 343,D-1421,and D-126)系の溶液内(H_2O,Methanol)での高速電子移動速度を蛍光upconversion法により決定した。水系のTiO2表面においては、色素分子は非常に強く吸着し、効果的にその蛍光は消光される(結合定数<59000M^<-1>、消光比<10^<-2>)。この系における電子移動速度は2.5x10^<-13> sec^<-1>(40fsec)以下であると決定された。この値はこれまで観測された不均一界面での電子移動速度の中で最速であり、注入電子が半導体伝導帯中でdephasingされた場合の電子注入時間の理論値10-50fsecを実験的に検証したはじめての例である。この不均一系における高速電子注入のstates overlappingと半導体/色素の電子準位間のelectrnoic couplingの効果を明らかとするために、溶媒依存性、色素と半導体の種類依存性を詳細に検討した。その結果、ΔG<0.3eVとなりstates overlappingが減少すると注入速度は二桁以上遅くなることが分かった。また、分子全体の共鳴構造が半導体表面との結合官能基であるカルボシキル基まで達していて且つ、t_<2g>軌道対称性を持つ表面の電子軌道と相互作用することが効果的な電子注入のために重要であり、これらがelectrnoic couplingの状態を支配することを見出した。以上の検討から、高速電子注入を可能とする不均一系の特徴が明らかとなった。
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