研究課題/領域番号 |
07044155
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉恵 頼寧 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (70034410)
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研究分担者 |
藤原 章正 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 助教授 (50181409)
POLAK John Imperial College土木工学科, 助教授
JONES Peter Westminster大学, 環境学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1995
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キーワード | 選好意識 / 交通需要分析 / 交通手段選択 / ロジットモデル / トリップ前情報 |
研究概要 |
情報通信技術の発展により、所要時間情報や駐車場情報など刻一刻と変化する動的な道路交通情報を情報表示板やカ-ナビゲーションシステム等を通じて提供することが可能になった。このような交通情報が自宅内や事業所内においてトリップ前に提供されれば、トラベラ-の交通行動 (出発時刻、目的地、利用交通手段、経路の選択など) の選択肢が広がり、出発時刻の分散、自動車から公共交通への転換などにより、都心部の慢性的な交通渋滞の緩和、安全性の向上、環境問題への対応に一層の効果が期待される。さらに移動の取り止め、目的の異なる移動の統合、自動車相乗りのマッチングの効率化などによる総交通需要の削減の効果も考えられる。 そこで、交通情報システムの整備が進み各家庭において随時、トリップ前情報の提供サービスを受けることが可能になった場合を想定して、その利用に関する選好意識 (SP) 調査を1994年11月、東広島市在住者で広島市方面に通勤している人を対象に実施した。東広島市は広島市内から約30〜40Km東に位置し、通勤時に利用されている代表交通手段は自動車と鉄道である。 調査票は実際の通勤行動 (RP) 調査とSP調査から構成されている。RP調査では普段の通勤目的の状況と広島市方面に買物目的で出かけた時の状況について質問した。SP質問では、通勤目的と非日常的な買物目的の場合に分けて仮想状況を設定した。まず通勤目的の場合、当該地区の通勤実態の予備調査結果から出発時刻の時間帯を大きく4つに区分し、各時間帯別における自動車と鉄道の所要時間、料金、混雑状況 (自動車の場合は渋滞距離、鉄道の場合は着席できるか否か) を仮想的に設定し、もっとも好ましい出発時刻 (4肢)、交通手段 (2肢)、経路(2肢) を同時に選択してもらった。買物目的の場合にはさらに駐車場料金、駐車場待ち時間、駐車場までの徒歩時間を設定し、目的地の選択 (2肢) を追加した。 本研究の目的は、この調査データを用いて交通選択モデルを構築し、以下の2点から、トリップ前情報が通勤及び買物目的の交通行動に及ぼす影響を明らかにすることである ; 1) 交通サービス変数の経験値と情報の影響の比較 2)トリップ前情報提供下における交通行動の意思決定構造の解明 前者に関しては、経験に基づいて個人が持つ知覚値と提供された情報の影響力の相対的重みを表すパラメータを含むモデルを構築した。後者に関しては、出発時刻選択、交通機関選択、目的地選択 (買物のみ)、経路選択の行動の独立性、階層性について検討した。 また交通行動は、利用経験の豊富な通勤のような行動か否か、買物のような時間制約の少ない行動か否か、あるいは工事や突発的な事故などによる非日常的な交通混雑の有無によって情報の利用の仕方が大きく異なることが予想される。そこで移動目的、当日の交通状況の違いによるトラベラ-のトリップ前情報に対する反応の違いについても検討した。 本研究で得られた重要な知見の1つは、トラベラ-はトリップ前情報と普段の経験の両方に基づいて交通手段選択を行うことが明らかになったことである。特に経験値と情報の差が選択意向に関係していることが示された。第2の知見は、交通サービス変数に対するトリップ前情報と日頃の経験に基づく知覚値の相対的重みを定量化したことである。本事例では情報が経験の約3倍の重みがあることが示された。また事故や工事などの非日常的な交通状況においては、トリップ前情報の影響がより大きいことが示された。
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