研究課題/領域番号 |
07044166
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
宮本 徹 日本大学, 理工学部, 教授 (10059256)
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研究分担者 |
SCHYLAPTSEVA アラー ガラス技術研究所, 主任研究員
KANTSYREV V. ガラス技術研究所, 研究室長
高杉 恵一 日本大学, 理工学部, 講師 (50187952)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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キーワード | Zピンチ / 軟X線 / 毛細管集光器 / X線分光 |
研究概要 |
高輝度軟X線領域の点光源は、X線顕微鏡、物質の微細構造の観測等のため必要性が高い。この研究の目的は、日本大学のZピンチ装置により生成される、電子温度約1000万度の高密度プラズマを、ロシアガラス技術研究所の提供する各種X線技術により種々の観点より観測することにあった。具体的には、ロシア側で製作した毛細管集光器の集光の特性を調べると共に、それを用いて放射軟X線を集光、観測を行ない高輝度軟X線点光源を構成するための基礎研究を行うこと、またピンチから放射される各種軟X線の分光観測を行った。 1.軟X線集光およびそれに関連する研究 平成7年度に、軟X線集光のための毛細管集光器(capillary converter)が製作され、予備的な実験が行われた。その結果、波長が1nmより長い軟X線のみを選択的に伝達し、1mm以下のスポットに収束させる能力を持っていることが確認された。これはまた硬X線に対するフィルターの役割を果たしうることも示唆している。しかし、口径が小さく、広い領域にわたるプラズマからの軟X線放射を集光するには十分ではなかった。 その経験をふまえ、平成8年度には、口径の大きな毛細管集光器を製作し、Zピンチにおいて特に強い放射が起こるホットスポットの観測を行った。さらに広い範囲の観測のためには、より大きな口径が必要となるが、原理的な困難はないと考えられる。ただ必要な毛細管の本数が口径の2乗に比例して増えるため、製作のための技術的、経費は急速に増加する。毛細管集光器による観測の結果、予想されたように、硬X線に対してはフイルターの役割を果たし、軟X線のみを分離して観測することが可能であった。Zピンチの放電電極付近からは、加速電子の照射による強い硬X線が発生する。しかし、毛細管集光器を用いることにより、これらおよび加速電子によるホットスポットからの硬X線成分を除いた軟X線成分の観測から、高温の熱プラズマの様子が明らかになった。 2.X線分光に関する研究 X線分光に関しては、結晶を用いた分光と多層膜を用いた分光を行った。Kantsyrev氏の分光器は、放電プラズマ観測に特化した極めてコンパクトな実験用の分光器で、結晶の種類を変更し、測定波長領域を簡単に変更可能である。この研究ではほぼ同じものを製作して実験を行った。 (1)軟X線用の結晶分光器を用いた観測 平成7年度はKantsyrevの持参した分光器を用いて行われ3.4nm-4.6nmおよび1nm以下の領域でのX線の観測を行った。プラズマ柱の側面からの観測で、2つの波長領域のX線の放射場所がはっきり異なっているという結果が得られた。この相違は不安定性の発生場所に基づくものと考えられるが、観測が50-100回の放電の積分なので時間的な経緯は明確ではない。ただX線発生と関係する不安定が、プラズマ柱において同じ確率で均等に起こるのではなく、その発生場所は電極、ガスパフによるガスの分布等に影響されていることを示している。 (1)軟X線用多層膜を用いた、ガスパフZピンチプラズマの観測。 結晶分光器および多層膜分光器でX線の観測が行われた。多層膜を結晶の代わりに用いた回折格子分光器で得られた興味ある結果、スペクトラム解析と同時に、スペクトルの分散と垂直方向に、発光源の1次元的な空間分布の観測も可能なことが明らかにされた。ただ、像が不鮮明であったため、平成8年度に鮮明な像を得るよう努力したが、必ずしも鮮明にはならなかった。我々の分光測定は前述のように多数回の放電の平均であり、現象の再現性から見て当然ともいえる。しかし、さらに高輝度の放電では光源のスペクトラムの空間分布測定が可能となるであろう。
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