研究課題/領域番号 |
07044172
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 教世 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10001851)
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研究分担者 |
丸井 隆之 奥羽大学, 歯学部, 教授 (40076047)
VALENTINCIE テイナ リュウブリアナ大学, 生物工学部, 教授
CAPRIO John ルイジアナ州立大学, 文理学部, 教授
栗原 堅三 北海道大学, 薬学部, 教授 (00016114)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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キーワード | 化学感覚 / 魚類嗅覚 / 魚類味覚 / トランスダクション / アミノ酸 / 嗅覚味覚受容体 / イオンチャンネル / 餌食行動 |
研究概要 |
平成7年から平成8年度の2カ年に亘り、研究組織を構成する5名の研究者、鈴木教世(代表者)、栗原堅三、John Caprio、Tine Valentincic、丸井隆之が、それぞれの国の研究機関を拠点に、その研究機関所属の研究者を主体とし、他の研究者が協力するかたちで「水棲動物の化学受容機構」(Chemoreception Mechanisms in Aquatic Animals)に関する共同研究を行った。以下の主要項目について研究を進め新しい知見を得ると同時に、今後の研究発展の方向性を明らかにした。 1)魚類の嗅覚、味覚末梢系における化学受容機構:ニジマス、ナマズ、コイの嗅上皮、味上皮から、嗅細胞、味細胞を分離し、パッチクランプ法による技法と従来の電気生理学的技法により、嗅細胞、味細胞の応答を調べた。ニジマス、ナマズの嗅上皮には、絨毛型と微絨毛型の2種の嗅細胞が含まれ、両型の嗅細胞には、興奮性応答と抑制性応答があり、4種の代表的単一アミノ酸については、異なる応答スペクトラムを示し、電気生理学的には、個々の嗅細胞には複数のアミノ酸受容体が分布することが明らかとなり、既に他の研究者グループにより唱えられている仮説(一個の嗅細胞に一個しか発現していない嗅覚受容体とそれに連関する嗅覚変換機構で行われるとする仮説)以外の嗅覚変換機構の存在が示唆された。 2)サケ科魚類の母川回帰の嗅覚機構:広塩性魚類のサケ科魚類のモデルとしてのニジマスの嗅上皮の塩濃度環境変化に伴う嗅細胞のアミノ酸応答変化を調べ、塩濃度が変化してもアミノ酸応答に影響を与えないこと、また、サケの母川水組成の分析から、母川回帰時のサケは母川水のアミノ酸類の組成の違いを嗅覚で識別していることが示唆された。また、母川の匂記憶に関して、母川回帰時に嗅覚神経系に特異的に発現する蛋白質や嗅覚神経系の興奮に伴い一過性に発現するc-fosを指標に母川水の記憶の神経部位の同定を進めている。 3)魚類味覚中枢の化学刺激情報処理:ナマズの味覚中枢神経核ニューロンのアミノ酸及び触刺激応答から、味覚刺激のみ、触刺激のみ、それら両刺激に応答するニューロン群があることが分かった。これら中枢ニューロンの応答特性は、末梢味神経の味覚刺激のみ、触刺激のみ、それら両刺激に応答する末梢神経群の広範な組み合わせのシナプス収斂によるものであると結論された。また、末梢の味覚神経のアミノ酸や触応答は、1mM程度のキニン(quinine-HCl)により抑制された。これは、味細胞膜に分布するCa-チャンネルのキニンによる抑制的薬理効果であることが示唆され、現在その点を分離味細胞で確認することが進行中である。 4)魚類の化学間隔索餌行動:ナマズについてアミノ酸刺激に対する嗅覚条件付け行動をヴィデオ解析の結果、ナマズが単一のアミノ酸液に条件づけられると他の多数の単一アミノ酸類を識別することが分かった。また、電気生理学的に同強度の二種アミノ酸、ロイシンとノルバリンの混合物に条件づけされると、ナマズは混合物中のより強度の高いものを指標に、他の二種のアミノ酸混合物を識別することが明らかになった。これらの行動観察の結果は、サケの母川回帰において、河川により異なる水のアミノ酸組成、即ち混合物を嗅覚手がかりとして母川識別する行動の基盤を示唆している。 5)魚類味覚変換機構:コイの味細胞における味覚受容体-G蛋白質連関変換機構の存在を明らかにするため、コイの味蕾からG-蛋白質のmRNAを抽出し、cDNAのクローニングを行い、それらの一つについてDIGプローブによるin situ hybridizationを行った結果、コイの味蕾細胞先端部での発現分布が確認された。しかし、金魚、ゴンズイ、ナマズの味蕾には発現が見られなかったので、これが、コイに特異的なものかどうかをさらにノーザンブロット法などで確認を進行中である。
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