研究概要 |
アトピー性皮膚炎の発症メカニズムを解明する目的で組織された日米による本研究プロジェクトの平成7年度における研究は,「NCマウスの皮膚炎発症誘因としての環境因子の解明」と「NCマウス皮膚病変の形態学的特徴と特異的炎症反応の把握」である。その研究経過と得られた研究成果は,以下の如くである。1)本研究全般に必要なSPFおよびコンベンショナルNCマウスの繁殖は,予定どおり拡大・維持が可能となった。2)NCマウスの皮膚炎発症誘因としての環境因子の解明:ピクリルクロライドおよびアレルゲン(ダニなど)の抗原感作による皮膚炎の誘導に関する研究は現在実施中である。3)NCマウスの皮膚病変の形態学的特徴と特異的炎症反応の解析は予定した計画どおり行い終了した。4)予定したヒトアトピー性皮膚炎との比較に関する研究解析は終了した。5)SPFNCマウスは,生後約7週齢以前にコンベンショナル環境下に移動した場合にかぎり,皮膚病が発症するが,それ以後ではたとえ発症マウスと同居させても発病しなかった。6)マスト細胞の増加と脱顆粒像が観察された。さらに,好酸球の浸潤および好酸性物質の局所状着が顕著に認められ,これらの細胞が活性化状態にあることが明らかとなった。その結果,マスト細胞と好酸球に由来する起炎物質の病態関与が強く示唆された。7)アトピー性皮膚炎に特徴的な皮膚組織内へのリンパ球およびマクロファージの浸潤は,皮膚病変の悪化に比例し顕著となった。
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