研究概要 |
アトピー性皮膚炎の発症メカニズムを解明する目的で組織された日米による本研究プロジェクトの平成8年度における研究は,「IgE誘導アレルギー関連サイトカインの産生動態解析」と「リンパ球の局存性と機能変化の解析」である。その研究経過と得られた研究成果は,以下に示す如くである。 1.IgE誘導にはTリンパ球上のCD40リガンドとBリンパ球上CD40結合,さらにIL-4刺激が必要であるが,NCマウスにおいてはCD40-CD40リガンド結合には異常はなく,Bリンパ球のIL-4感受性が著しく高いことが,シグナルトランスダクションレベルからも明らかになった。さらに,皮膚炎発症マウスでは,いわゆるTh-2サイトカインであり,IgE産生を支持するIL-4,-5,-6などの産生が顕著であることが判明した。 2.ハプテン反復塗布によってSPFNCマウスに,アトピー性皮膚炎に酷似した病態を誘導可能になり,新たな解析モデルを作出できた。高IgE血症を伴うことから,現在,IgEレセプター欠損マウスとの交配により得られたIgEレセプター欠損NCマウスへの本実験システムの応用を試みている。これによって,IgEの病態発現への関与を明確にする直接証拠を得ることができる。 3.高IgE血症を伴うヒトアトピー性皮膚炎患者において,CD4陽性Tリンパ球の局所浸滑,さらにマスト細胞の増加と活性化,好酸球浸潤と活性化が確認された。一方,CD8陽性Tリンパ球の浸潤は極めて少数であり,抑制性機能の低下が推察された。この様な現象は,皮膚炎発症NCマウスとほぼ一致した。
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