研究課題/領域番号 |
07044191
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡崎 恒子 名古屋大学, 理学部, 教授 (10022584)
|
研究分担者 |
HIETER Phili ジョンスホプキンス大学, 医学部, 教授
舛本 寛 名古屋大学, 理学部, 講師 (70229384)
|
研究期間 (年度) |
1995
|
キーワード | セントロメア / テロメア / 人工染色体 / YAC / アルフォイドDNA / CENP-B / CENP-B box |
研究概要 |
セントロメアは染色体の伝達を制御する重要な領域であるが、多細胞真核生物においてはいまだ必須DNA構造が不明である。本共同研究では酵母人工染色体(YAC)技術を用いてヒト21番染色体の全セントロメア領域をカバーする巨大DNAライブラリーを作成し、ついで必須DNA配列の分離とその構造及び機能の解明を行なうことを目的としている。必須DNA配列の同定は、分離クローンがセントロメア配列をもつ場合には哺乳動物細胞内で独立の人工ミニ染色体として安定保持される、との基準で行なう。従って、この研究は哺乳動物人工ミニ染色体(MAC)の構築とその加工技術の開発につながるものである。 岡崎研ではこれまでの研究により、ヒト21番染色体セントロメア領域に2種類の巨大アルフォイド配列(α21-Iとα21-II)が隣接して存在することを見出し、その制限酵素地図を完成している。α21-Iは11マ-の規則的繰り返し単位からなりセントロメア抗原蛋白CENP-Bの認識配列(CENP-B box、17bp配列)が規則的に存在(360塩基対に1回)する1.3Mbpの領域であり、α21-I領域は、構成単位に規則性がなくCENP-B boxがほとんど存在しない約2Mbpの領域である。本研究ではまずYACベクター中にこれら2領域及びその隣接領域を巨大DNA断片として組み込んだクローンを得、ついでこのクローンの両端に哺乳動物テロメアを組み込む技術を確立すること、また得られた巨大YACクローンを動物細胞中に導入する方法を検討することなどを目標とした。本研究ではYAC技術を有効に使うことがその成否を決めるので、Hieter研はYAC技術改良とその利用方法一般について実験と助言を行なうことにより、本研究の推進に協力する体制をとった。大学院研究生北川が約4ヵ月Hieter研におもむき、指導を受けた。本年度以下の成果を得た。 1.巨大繰返し配列をYAC中に安定にクローン化するに適した宿主酵母株を検討した。これまでの解析により、繰返しDNAはYACにクローン化すると不安定であることが判明していたので、宿主としてrad52株、rad51,rad52株などの酵母組換欠損株を用いてクローン化を試みた。rad52株が形質転換効率とゲノムの安定性の両方を満足することが明らかとなった。 2.ヒト21番染色体を持つマウス/ヒト雑種細胞WAV17由来DNAを用いてYACライブラリーを作成し、rad52株中にクローン化した。スクリーニングによりα21-I及びα21-IIを含むクローンがそれぞれ数個得られ最大長のものはいずれも100kbであった。これ以上長い断片を含むクローンが得られなかった理由については、アルフォイド配列中に酵母細胞中で機能する複製起点が存在しないためである可能性が考えられる。 3.アルフォイドYACクローンの構造解析と二領域のゲノム上の位置と境界領域の構造を決定した。FISH法を用いて、α21-Iとα21-II領域がゲノム上で隣接していることを証明した。分離したYACクローン中にはα21-Iとα21-IIの両領域が共存するものがなかったので、コスミドライブラリーにより両者の共存するクローンを得て両者の境界領域の一次配列を解析した。シークエンスの結果二領域の中間にアルフォイド以外の別個の配列は存在せず、次第にCENP-B boxがまばらに存在するようになると平行して繰り返し単位の規則性が失われてI〜II領域へ移行することが判明した。 4.アルフォイドYACクローン中へのヒトテロメア配列の導入に成功した。哺乳動物細胞中でアルフォイドYACクローンが安定保持されるためには、末端に哺乳動物テロメア配列が存在する必要がある。そこでアルフォイドYACクローンの末端を、ヒトテロメアと哺乳動物細胞内での選択マーカーをもつ末端配列におきかえるために、rad52株中で相同組換えを一時的に誘発する方法を開発した。この方法を用いてヒトテロメアをもち、約100kbのα21-I及びα21-IIをそれぞれ含むYACクローンを構築した。 5.YACクローンのヒト培養細胞中への導入法と導入細胞のクローン化について検討を行なった。顕微注入及びリポフェクション法によりヒト培養中へアルフォイドYACクローンが導入可能であることがわかった。これまでに数個の形質転換株を得た。 今後は形質転換株中での導入クローンの存在様式を解析し、セントロメア必須DNA構造を決定し、この配列に依存して形成されるキネトコアの構造を解析する。また哺乳動物遺伝子操作ベクターとしての利用を視野に入れて改造を試みる。
|