研究課題/領域番号 |
07044201
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 邦夫 大阪大学, 医学部, 助教授 (90201780)
|
研究分担者 |
MONTESANO Ro Faculty of Medicine, University of Geneva, 教授
小清水 右一 大阪大学, 医学部, 助手 (50281126)
中村 敏一 大阪大学, 医学部, 教授 (00049397)
|
研究期間 (年度) |
1995 – 1996
|
キーワード | HGF / Met / 上皮一間葉相互作用 / 形態形成 / 器官形成 / HLP |
研究概要 |
1.研究の目的 HGF(肝細胞増殖因子)は長らく実体の不明であった。肝再生因子の本体として機能する増殖因子であるが、最近の研究からHGFは腎臓、肺などの臓器傷害に対しても器官再生因子として機能するとともに、細胞の増殖促進に加え、細胞の運動性を促進する活性、さらにMontesano博士らとの共同研究によって、HGFが上皮細胞の形態形成を誘導する活性を有することが明らかになった。このような背景の元に、HGFは古くから組織の誘導、器官形成において重要な相互作用として知られている上皮一間葉相互作用のメディエーターとして発生過程において重要な役割を担うことが示唆されている。本研究は初期胚発生ならびに器官形成過程におけるHGFならびにそのファミリー分子の役割を分子レベルで解析することを目的とする。 2.研究成果 (1)アフリカツメガエルならびにニワトリにおけるHGFの機能解析 アフリカツメガエルならびにニワトリのHGFとc-metのcDNAクローニングを行ない、胚発生過程における遺伝子発現パターンを解析したところ、主に腹側内臓臓器と骨格系の形成過程において発現していることが明らかになった。さらにc-metのドミナントネガティブ体をアフリカツメガエル胚に導入し、HGFのシグナルをブロックすると、肝臓や腎臓などの内臓臓器の形態形成ならびに胚の骨格形成に重要な役割を担うと考えられる。 (2)肺器官形成・形態形成におけるHGFの機能解析 ラット胎児肺ではHGFとそのレセプターであるc-Metの遺伝子発現はそれぞれ間葉組織および気管支上皮組織に限局して認められ、肺原基の器官培養系においてHGFは上皮組織の分枝管腔構造形成を促進した。肺原基より間葉組織を取り除き上皮単独培養を行なったところ、HGFは肺上皮組織の形態を維持、細胞死を抑制するとともにaFGF(またはKGF)と同時に添加することにより上皮組織の細気管支様の枝分れおよびその伸長を有意に促進した。また肺原基の器官培養系にHGFの中和抗体を添加すると細気管支の枝分れは顕著に抑制されたが、さらにaFGFおよびKGFの共通のレセプターであるKGFレセプター(KGF-R)のアンチセンスDNAと組み合わせて添加することにより肺原基の分枝管腔構造形成はほぼ完全に阻害された。 HGFは肺の器官形成過程において間質に由来する上皮組織の形態形成誘導因子として機能する上皮一間葉相互作用のメディエーターであることが明らかになった。一方、HGFはそれ単独で上皮組織の形態変化を誘導するのではなく、aFGFまたはKGFなどの刺激によるKGF-Rを介した主なると協調することにより肺上皮組織の正常な形態形成が起こることが示され、肺上皮組織の形態形成はHGFならびにFGF(aFGF、KGF)が担っていると考えられる。 (3)HGFによる歯ならびに乳腺の形態形成誘導 歯胚形成過程においてもHGFの発現は歯胚間葉組織にc-Met/HGFレセプターは上皮組織に局在した。歯胚の発生、形態形成におけるHGFの機能を明らかにするため、HGFのアンチセンスDNAを歯胚器官培養系に添加したところ、著しい形態形成の異常が観察された。また乳腺上皮組織に由来する培養細胞株に対しても、HGFはコラーゲンゲル内で枝分れした管腔構造を誘導し、HGFは様々な上皮系細胞形態形成因子であることが明らかになった。 (4)アフリカツメガエルにおけるHGFならびにMet/HGFレセプターファミリーのクローニング 現在、HGFファミリーに属する分子としてHGF-like protein(HLP)/macrophage stimulating protein(MSP),Met/HGFファミリーの分子としてHLP/MSPのレセプターであるRon、ならびにSeaチロシンキナーゼが知られている。発生過程におけるHGFファミリー分子の機能を明らかにするためアフリカツメガエル胚に存在するHGFならびにc-metファミリー遺伝子スクリーニングを行なった。その結果、HLP/MSPと新規Met/HGFレセプターファミリー分子と思われる遺伝子をコードするcDNAが得られた。アフリカツメガエル胚発生過程においてHLP/MSPと新規Metファミリーレセプターは共に受精卵に母性因子として蓄えられており、その後原腸形成期から神経胚期に高レベルで発現していることが明らかになった。
|