研究分担者 |
CUTTING Simo ロンドン大学, 講師
SCHUMANN Wol バイロイト大学, 教授
RUTMAN Andre ヘブライ大学, 助手
AMOS Oppenhe ヘブライ大学, 教授
BUKAU Bernd ハイデルベルグ大学, 助教授
JAFFE Aline パリ第7大学, ジャクモノ研究所, 助教授
山添 光芳 熊本大学, 医学部, 助手 (00284745)
仁木 宏典 熊本大学, 医学部, 講師 (70208122)
小椋 光 熊本大学, 医学部, 助教授 (00158825)
SIMON Cutting University of London, Lecturer
WOLFGANG Schumann University of Bayreuth, Professor
ANDREW Joel Rutman The Hebrew University, Instructor
OPPENHEIM Amos B The Hebrew University, Professor
BERND Bukau University of Heidelberg, Associate Professor
ALINE Jaffe University Paris VII,Associate Professor
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研究概要 |
大腸菌の染色体分配の分子機構およびATP依存性FtsHプロテアーゼについて研究し、以下の成果を得た。染色体分配に必須の機能を持つmukF,mukE,mukB遺伝子がオペロンを形成していることを明かにした。これらの蛋白の機能や細胞内分布を調べるため、それぞれにHisタグやT7タグを付け精製した。精製したMuk蛋白の相互作用を免疫共沈法で調べたところ、MukB,MukEおよびMukF蛋白間に相互作用があることが分かった。このうちMukBとMukFの相互作用は酵母two-hybrid系でも確認した。大腸菌における蛋白の細胞内分布を調べるため、新しい蛍光抗体顕微鏡法を開発した。その方法によりMuk蛋白群の細胞内分布を調べたところ、MukE蛋白は細胞の長軸に沿って片側の細胞周辺部にフィラメント状に分布することが分かった。種々の蛋白について調べた結果、EF-Tuなどの細胞質蛋白やTolC、Lppなどの外膜蛋白もMukEと同様の分布を示し、多数の蛋白から構成される膜会合細胞骨格様構造(MACS: membrane-associated cytoskelton-like structure)が存在することを発見した。MACSは細胞周期に伴ってその構造を変化させ、細胞分裂時には隔壁形成部位周辺に集まる。この構造体はMukBモーターが染色体DNAを運ぶときレールの役割をするのではないかと考えている。mukB106変異のサプレッサー変異smbBはプロセッシングエンドヌクレアーゼRNaseEのC末端側の欠失した変異であることが分かり、ポリヌクレオチドホスフォリラーゼとの結合能を失っていることが明らかになった。Muk蛋白と相互作用する蛋白をスクリーニングする系を確立し、分配装置を構成する蛋白の探索が可能になった。 熱ショック転写因子σ32を特異的に分解するFtsHプロテアーゼの機能をさらにin vivo,in vitroで解析した。σ32の分解反応系においてシャペロン蛋白DnaK,DnaJ,GrpEが果たす役割を解析し、これらのシャペロンを加えてもσ32の分解促進は起らず、むしろ阻害的に働くことが分かった。In vivoでσ32の安定性に関与することが示唆されているσ32のC領域に相当するペプチドを合成し、これを基質としてFtsHによる分解を調べたところ、このペプチドはATP依存的に複数箇所切断されることが分かった。In vivoでFtsHプロテアーゼを阻害するICIII由来のペプチドは、in vitroでもFtsHのプロテアーゼ活性を強く阻害した。FtsHの各ドメインの機能を解析するため部位特異的変異を導入して変異蛋白を作製した。ATPaseドメインの中でよく保存されたWalkerモチーフとSRH領域、及びZn結合モチーフ(プロテアーゼ活性ドメイン)がプロテアーゼ活性に重要であることを明らかにした。ΔftsH変異の致死性を抑制するsfhC変異はリン脂質合成経路の酵素FabZの活性が上昇した変異であることが判明し、さらにftsH変異株ではリポ多糖合成経路の酵素EnvAのレベルが上昇して、リポ多糖が過剰生産され、ペリプラズムに異常な膜構造が形成されることが分かった。FtsHは主要膜構成成分であるリン脂質とリポ多糖の合成調節因子と考えられる。枯草菌の胞子形成に関わる遺伝子spoVMの変異のサプレッサー変異としてftsH変異を同定し、ftsHが胞子形成に関与することを明かにした。SpoVM蛋白はわずか26アミノ酸残基からなり、これを化学合成してin vitro系で大腸菌FtsHプロテアーゼ活性に及ぼす効果を調べた。その結果、SpoVMはFtsHを特異的に阻害するとともにそれ自身基質として分解されることが明らかとなった。
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