研究概要 |
本年度は本共同研究の最終年度に当たるので、双方の研究を新しく飛躍的に展開しうることを重要視し、有尾両生類のイモリについて、レンズの再生機構にかかわる未解決の問題、すなわち1)レンズの再生細胞となる虹彩色素上皮細胞の加齢と再生機能との関連性、2)レンズ再生の虹彩色素上皮上縁部の局在性、および3)初期胚発生で重要な働きをする各種遺伝子が、レンズ再生に伴ってどのような発現パターンを示すかという3課題について集約的に共同研究を展開し下記の成果を得た。 1)レンズを繰り返し再生させることで、虹彩色素上皮細胞の継続的な分裂増殖を促したところ、10回目を越えるあたりからレンズの再生が有意に遅延することが明らかとなり、レンズの再生細胞となる色素上皮細胞の加齢は最終的には再生能の喪失につながることが示唆された。 2)FGF(繊維芽細胞増殖因子)の過剰投与により、虹彩上縁部以外の部分からのレンズ再生が促され、FGF受容体はレンズ再生を抑制する可能性を強く示唆する結果が得られた。 3)初期胚発生における組織間相互作用にとって重要な働きをしていると考えられている各遺伝子(pax-6,FGF-1,FGFR-1,FGFR-2,FGFR-3,prox-1,およびshh)は、いずれもレンズ再生過程において特徴的な発現パターンを示し、再生過程における組織間相互作用を調節している可能性が示された。 これらの成果は、いずれも従来得られなかった極めて重要な新知見であり、1)については、受精卵から育成した齢期の明らかな個体群について系統的に調査するための体制を整え、2)については遺伝子レベルの解析を進めつつある。このように本年度の研究により、新しく学術的意義の高い研究の展開が可能になった。
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