研究課題
(1)ミトコンドリア遺伝子異常による難聴:これらの家系には過去にアミノ配糖体抗生物質の投与歴のある患者が多く、母親から子供に遺伝しているケースが父親経由で遺伝しているケースの約3倍あったことからミトコンドリアDNAの変異(mutation)によって難聴が起きている可能性が示唆された。ミトコンドリアDNAの変異の有無に関し検討した結果、5家系に1555A-G変異が存在することが明らかとなった。(2)Non-Syndromic hearing loss/常染色体劣性遺伝:聴力像から、3つのタイプに分類されることが明らかとなった。第一のグループは高音障害型の難聴で中低温は軽度障害されるのみで緩やかに進行するが成人期になると進行は停止するのが特徴である。一般に常染色体劣性遺伝の研究は遺伝子のheterogeneityのために原因遺伝子の特定が困難であったが、前述のように当地方は従来、人の交流が少なく、遺伝子のhomogeneityが保たれている可能性が高い。今回、検討した家系のうち「工藤」家が6家系あったがそのうち5家系がこのグループに属することは興味ある結果と思われた。このいわゆる「工藤」タイプの難聴が同一の原因遺伝子によるものである可能性が示唆され、今後中耳、内耳の奇形の有無、前庭機能障害の有無などの臨床データの検討とともにポジショナルクローニングによる原因遺伝子の特定を目指す予定である。第2のグループは水平型(ときにはやや高音漸傾型、低音障害型)の軽度難聴を示すグループで非進行性であるのが特徴である。第3のグループは高度難聴型であるがこのタイプを示す家系は数家系のみであり当地方には比較的少ないタイプの難聴であることが示唆された。
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