研究概要 |
1 ミトコンドリア遺伝子異常による難聴: 平成7年度からミトコンドリアDNAの変異の有無に関し検討してきたが、その結果、10家系に1555A-G変異が存在することが明かとなった(Uasami et al.,Laryngoscope,in press)。ミトコンドリア遺伝子の1555点変異は特にアジア系民族に重要な遺伝子異常である可能性が高いと考えられている。ミトコンドリア遺伝子においては進化の過程で起こる塩基置換の速度が核遺伝子に比較し速く、多くのミトコンドリア遺伝子の多型が存在する。今回1555変異を持つ患者のミトコンドリアDNAの多型について解析を行い、1555変異を持つ11家系に共通する他の点変異の有無、あるいは進化的側面からみた1555変異の位置付けを行った。抽出したミトコンドリアDNAにおける11ケ所の点変異の有無に関し8種類の制限酵素を用い、PCR-RFLP法にて検討した。またアジア人に特異的とされる9bp-deletionの有無の検討やD-loopの塩基配列から変異の確認を行った。これらの遺伝子解析により1555変異を持つ家系がいくつかのグループに分類出来、共通祖先や進化の過程を探る手掛かりとなりうることを報告した(Abe et al.,ARO meeting,1997,2 St.Pete Beach,FL,USA)。 2 Non-Syndromic hearing loss/常染色体劣性遺伝: 平成7年度、難聴の臨床像から、いくつかのタイプに分類されることが明らかとなった。今年度、そのうち前庭水管拡大を伴った難聴のうち常染色体劣性遺伝形式を取る難聴に関し注目し、3家系の臨床データを解析し報告した(Abe et al.,Annals Otol Rhinol Laryngol,in press)。原因遺伝子の特定を目指し現在種々のマーカーを用いスクリーニングを行っている。
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