研究課題
神経細胞への入力は神経賦活因子などの受け渡しが行われており、神経細胞死の発生機構を理解する上で重要である。入力、即ちシナプスの形成維持をおこなうセロトニンの働きは2A型受容体によって介在されていることは以前の我々の研究で明らかになっている。2A型受容体は7回膜貫通型の蛋白である。この蛋白に特異的なN末端ペプチドとC末端融合蛋白を合成し、これらを抗原としてニワトリに免疫、卵の卵黄から抗体を分離精製した。抗体の特異性は培養細胞に2A蛋白を発現させるなどの方法で確かめた。ラット中枢神経系で免疫組織化学法により2A受容体の分布を調べた。脳全体での分布はこれまでに報告のあるオートラジオグラフィー法、in situ hybridization法はどの結果と一致した。しかし免疫組織化学法により従来の方法論では不可能であった細胞レベル、更に電子顕微鏡レベルでの解析が可能になった。大脳皮質ではほぼ全ての神経細胞が2A受容体を発現していた。特に錐体細胞の先端樹状突起の先端まで受容体は強く発現していた。超微形態観察では受容体蛋白は非対称性シナプスの後シナプス膜肥厚に一致して局在することが確かめられた。このよらな結果からセロトニン2A型受容体は脳機能を考える上で重要なものであることが推測された。シナプス数の維持機構にはセロトニンのほかにアセチルコリンなどの生体アミンも大きく関わっていると考えられる。従ってセロトニンのほかにアセチルコリンを減少させてシナプスの数の変動を検討した。この研究にはニワトリ脊髄よりもラット海馬が機能的な研究を行う上でも良いと考えた。両方のアミンを枯渇させると1週間で海馬のシナプスが最大58%減少した。その結果学習障害モデルを作ることが出来た。また長期増強がなくとも学習が成立することが確かめられた。
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