研究課題/領域番号 |
07044227
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
榎本 武美 東北大学, 薬学部, 教授 (80107383)
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研究分担者 |
関 政幸 東北大学, 薬学部, 助手 (70202140)
ISHーHOROWICZ 英国癌研究基金リンカーンズ, イン・フィールド研究所, 主席研究官
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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キーワード | DNA修復・組み換え / DNAヘリカーゼQ1 / トランスジェニックフライ / RecQ / SGS1 / メチルメタンスルホン酸 / 減数分裂 / 精子形成 |
研究概要 |
DNAヘリカーゼQ1は、色素性乾皮症の患者の細胞で変異しているヘリカーゼを検索する過程で我々がヒトの細胞から精製し、そのcDNAをクローニングしたタンパク質で、大腸菌のRecQホモローグでる。このDNAヘリカーゼQ1の発見により、真核細胞に、それまで全く知られていなかったRecQが関与するDNA修復・組み換え系があることが示唆された。本研究は、真核細胞のRecQの関与するDNA修復・組み換え機構を分子レベル、細胞レベル、個体レベルで総合的に解析するとともに、D.Ish-Horowicz博士との共同研究により真核細胞のRecQの発生における役割を解明しようとしたものである。本研究では、DNA修復・組み換えの解析には出芽酵母とマウスを用い、発生における役割の解明にはショウジョウバエを用いることにした。 1、出芽酵母のSGS1破壊株による解析 真核細胞のRecQタンパク質の機能を解析するために、遺伝学的解析の容易な出芽酵母のRecQホモローグ遺伝子をクローニングした。この遺伝子はトポイソメラーゼIII(TOP3)変異株の低い増殖性を抑制する遺伝子(slow growth suppressor,SGS1)として単離されたものと同一のものであった。このSGS1遺伝子にURA3遺伝子を挿入してSGS1遺伝子の破壊株を作製し、その性状を調べた。破壊株は、紫外線、X線、ブレオマイシン、マイトマイシンCにはほとんど感受性を示さなかったが、メチルメタンスルホン酸(MMS)やエチルメタンスルホン酸(EMS)等のアルキル化剤やヒドロキシウレア(HU)に対して感受性を示した。また、胞子形成能が野生株の1/8〜1/25に低下しており、減数分裂時の組み換えの頻度も約1/10に低下していた。この破壊株に野生型のSGS1遺伝子を導入すると胞子形成能の回復がみられ、MMSやHUに抵抗性になった。野生株にMMSやHUを処理したり、胞子形成を誘導するとSGS1 mRNAの発現が誘導された。特に胞子形成を誘導した場合には、DNAの組み換えが起きる時期の少し前からSGS1 mRNAの発現の増加が観察された。以上の結果より、Sgs1はメチルメタンスルホン酸などのアルキル化剤によるDNAの障害の修復や、減数分裂時のDNAの組み換えに関与していることが示唆された。 次に、SGS1に部位特異的に変異を導入して遺伝子破壊株に導入し、SGS1の機能ドメインの解析をおこなった。ヘリカーゼモチーフのドメインIに存在するATP結合部位のリジンを他のアミノ酸に変換すると、破壊株のMMSやHUに対する感受性を相補することができなかった。したがって、これらの薬剤によるDNAの傷害の修復にはヘリカーゼ活性が必要であると考えられる。 2、マウスのDNAヘリカーゼQ1 cDNAのクローニングとQ1の発現の解析 ヒトQ1 cDNAをプローブにしてマウスのspermatocyte cDNAライブラリーをスクリーニングし、マウスQ1cDNAをクローニングした。このマウスのQ1はヒトのQ1と比べると、塩基配列およびアミノ酸配列で、それぞれ75%と85%の相同性をもっていた。また、ヘリカーゼドメインでは95%の相同性が認められた。このcDNAを用いてQ1 mRNAの発現をマウスの種々の臓器での発現調べたところ、精巣、胸腺で高い発現が認められ、精巣で特に高く発現していた。生後日を追って精巣での発現を調べると、zygotene期やpachytene期の細胞が増加する14日目から発現の増加が観察され、Q1が減数分裂時のDNA組み換えに関与する可能性が示唆された。 3、ショウジョウバエのRecQの解析 ヒトDNAヘリカーゼQ1のcDNAをプローブにしてショウジョウバエのQ1cDNAをクローニングすることができた。しかし、トランスジェニックフライを作製して真核細胞のRecQの発生過程における役割を解析するまでにはいたらなかった。
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