研究概要 |
恒温動物の体温は発汗・血管運動・ふるえ等の自律機能,さらに行動と様々な効果器によって調節され,神経系がそれに重要な役割を果たしている.しかしこの神経機構は複雑さの故に解析が遅れ,体温調節研究の大きな壁となっている.本研究は体温調節に関わる視束前野ニューロンを形態学的,薬理学的,電気生理学的と総合的に解析し,体温調節の神経機構研究のための確実な橋頭堡を築こうとするものである.研究代表者の最近の研究で,体温調節性の皮膚血管運動に関係した視束前野ニューロンは中脳中心灰白質と腹側被蓋野に投射することが示唆された.本年度はふるえの神経回路についていくつかの問題点を検討した.破壊、刺激実験からふるえの調節には後視床下部(PH)が関与しており、視束前野・前視床下部(POAH)からの信号がPHで一度中継されて下位に送られるとの仮説が提唱されているが検証されてはいない.そこで先ずPHにはふるえの調節に必要なニューロンが存在するのか、あるいは他の部位からの神経線維が通過するだけなのかを検討した.寒冷に暴露したラットのPHにムシモールを投与したところふるえは抑制された.この結果はたしかにPHにはふるえに促進的に作用するニューロンが存在するものと思われる.またPHへの他の視床下部からの入力を遮断する形で脳に切断を加えたラットでもPOAHの温度刺激はふるえを変化させた.つまりPOAHからPHへは直列に信号が送られるのではなく両者は独立にふるえ調節に関与しているものと推測された.この結果は97年7月のロシアでの国際学会で発表の予定である.また彼末、ROmonaovskyを中心として体温のset-pointに関する理論的検討を加え、従来漠然と使われているset-pointの定義を明確にした論文を発表予定である.Schmidらドイツのグループは一酸化窒素とアンギオテンシンの視床下部への作用を詳細に検討した.
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