研究課題
本年度までに我々が同定した神経軸索再生への関与が予想される分子群が本当に生体の中で予想通りに作動しているのかを検証するため、発生工学的な手法を用いて神経再生時特異的に特定の遺伝子の発現促進や抑制を試みている。神経再生時特異的に強力な発現を得るためのプロモーターとしてGAP-43のプロモーターに着目し、作年度はGAP-43のプロモーターのクローニングを行い、細胞内情報伝達経路の再構築において最も重要な役割を果たすと考えられるMAPキナーゼファミリーに属するERKのアンチセンスをプロモーターの下流に接続してトランスジェニック(TG)マウスの作成を試みた。数回の試行の後、TG動物の作成の効率が究めて悪いと判断された。これはプロモーターに用いている領域が長すぎることが第一の原因であると考えられたので、本年度はGAP-43のプロモーター領域の軽量化に全力をそそぎ、今後の本実験系の汎用化をはかることとした。そのため、共同研究者の加藤英政が、平成8年4月1日より5月22日まで渡英し、プロモーター軽量化検定のための発現ベクターコンストラクトの作成を行った。その後、Allen博士が来日(平成8年5月21日〜6月2日)するとともに加藤が帰国し、研究結果の考察と今後の研究方針などについて大阪で討議した。加藤が作成したベクター群はAllen博士らによってマウスの受精卵に注入され、LacZ発現を指標に解析された。時間の節約のため、胎生期後期まで発生が進んだ段階で、胎児をとりだしLacZの発現が通常のGAP-43は発現と類似するかどうかを調べた。その結果比較的神経系に限局して発現するものが得られた。この時点で木山が訪英し、軽量化プロモーターを用いたTG動物ライン化を行うことを決定した。現在本動物のライン化が進んでいる。本研究で得られたGAP-43プロモーターの下流にLacZを持つTG動物は今後さまざまな神経損傷関連分子のアッセイ系に究めて有用であると期待される。
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