研究概要 |
広島大学総合科学部と米国ソ-ク研究所との国際共同研究により以下の研究成果あげることができた. 広島大学総合科学部:1.ヒト骨髄性白血病細胞HL-60がジメチルスルホキシド(DMSO)の処理により顆粒球へ分化し増殖を停止する変化の非可逆性の機構は,Double Minute染色体(DM)の細胞外への排出であることを明らかにした.レチノイン酸による顆粒球への分化・増殖停止も同様の機構で起こっている可能性が高い.2.DM上で増幅している遺伝子のうち非可逆変化の誘導の原因遺伝子は,意外にもc-mycではなく,別のガン遺伝子であることをほぼつきとめた.3.ソ-ク研究所との共同研究で開発した方法により精製したDMのDNAをプローブとして使用し,この原因遺伝子の諸性質をしめすcDNAの候補となる多数のクローンを単離することができた.4.フォルボールエステルによるマクロファージへの分化誘導・増殖停止の場合,DMの排出は起こらず、この変化は可逆である.一方,ビタミンD3による単球への分化ではDMの排出は生じるものの増殖停止は起こらない.これらの原因については更に検討中である.5.微小核にとりこまれ細胞核外へ排出されたDMは,細胞外でも確認された.6.ヒドロキシ尿素処理により微小核の形成を誘導すると,核膜に付着して存在していたDMが減少することがわかった. 米国ソ-ク研究所:1.DM染色体を含む細胞をヒドロキシ尿素で処理し,DM染色体選択的にとりこんだ微小核を誘導形成させ,この細胞から微小核を単離精製する方法を開発した.DMのDNAは100倍以上濃縮することができた.2.微小核の誘導形成能が高い薬剤は細胞周期のS期を延長する性質があること,またp53ヌル変異細胞は微小核を形成しやすいことを明らかにした.
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