研究分担者 |
PONNAPPA B.C Thomas Jefferson大学, 医学部, 助教授
KRAAYENHOF R Vrije大学, 分子生物科学研, 教授
DEVENISH R.J Monash大学, 生化学部, 教授
NAGLEY Phill Monash大学, 生化学部, 教授
寺田 弘 徳島大学, 薬学部, 教授 (00035544)
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研究概要 |
本年度は,主として下記の二つ方向の研究成果を得た. 1.異方性阻害剤のリピド平面二重膜における電気生理学的解析 研究代表者らが発見した異方性阻害剤(TPP^+,TTC^+等)のリピド平面二重膜における電気生理学的解析を行い,以下の重要な事実を明らかにした. 1)TTP^+よりも阻害活性の高い(4〜5倍)triphenyltetrazolium(TTC^+)ではほとんど膜電流を発生しなかった。また、TPP^+により発生した膜電流は、TTC^+の添加により逆に減少した.これらの結果は,異方性阻害剤によるリピド平面二重膜における膜電流産生と異方性阻害剤のエネルギー変換阻害能との間には相関性がないことを示している. 2)TTC^+の膜透過性がTPP^+に比べて低いということは、current-clamp法を用いた膜電位変化によっても明らかにされた。TPP^+存在下にTTCをえることによる膜電位の変化からGoldman-Hodgkin-Katz式に基づき計算したそれらの透過比(P_<TTC>/P_<TPP>)は、約0.3であった。これらのことは、異方性阻害剤の阻害活性がその膜透過性とは相関しないことを示している。 3)TPP^+による膜透過電流の産生には、数秒のlag timeが存在した。TPP^+による阻害反応にlag timeが存在しないので、TPP^tの膜透過はその阻害作用とは無関係と考えられる。 これらの発見は,エネルギー変換の分子コンデンサー仮説を強く支持している. 2.ラットH^+-ATP合成酵素の活性制御システムの解明 トロポニンTのCa^<2+>依存性トロポミオシン結合部位の共通配列と高いホモロジーがあるsubuniteの34〜65残基のペプチドを合成し,このペプチドに対する抗体をウサギを用いて作製し,以下の新事実を明らかにした.すなわち,今回作製した抗subunite抗体を用いて,H^+-ATP合成酵素精製標品及びSMPのATPase活性に対する抗体の添加効果を調べたところ,H^+-ATP合成酵素精製標品に対しては何の変化も見られなかったが,驚いたことに,ミトコンドリア内膜が存在するSMPに対して,抗subunite抗体を添加したとき活性が上昇することが明らかとなった.従って,subuniteがH^+-ATP合成酵素活性の制御に関わる本体である可能性が強く示唆されてきた.
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