研究分担者 |
MULLER Domin スイス, ジュネーブ大学・医学部, 教授
SODERLING Th アメリカ, オレゴン健康科学大学・ボラム研究所, 教授
山本 秀幸 熊本大学, 医学部, 講師 (60191433)
福永 浩司 熊本大学, 医学部, 助教授 (90136721)
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研究概要 |
動物脳海馬CA1領域で見出されたシナプス伝達長期増強(LTP)は,動物の学習,記憶の基本モデルと考えられており,その誘導機構についての研究が続けられてきた。阻害薬,遺伝子標的法における研究から,後シナプス膜に存在するN-メチル-D-アスパラギン酸グルタミン酸受容体刺激後に,後シナプスニューロン内でCaMキナーゼIIが重要な役割を演じていることが報告された。私達は,実際にLTP誘導後にCaMキナーゼII活性を測定し,活性化反応を確認した。 1)研究分担者・福永浩司をスイス・ジュネ-ブ大学に2回派遣し,引き続き,Muller博士との共同研究を行なった。LTPが長期に持続するには,CaMキナーゼII活性化反応が増強することは必須である。同時に,活性化CaMキナーゼII脱燐酸化酵素(プロテインホスファターゼ,PP)の不活性化反応が伴っていれば,CaMキナーゼII活性化反応がさらに増強する。そこで,PPのLTP誘導時における動態を調べた。PP2C活性は変化せず,カリクリンA感受性PP活性がLTP誘導時に減少した。特に,PP2Aの調節サブユニットがLTP誘導時に燐酸化されることがわかった。さらに,in vitroの実験で,PP2A燐酸化反応は,PP2A活性を阻害することを明らかにした。 2)研究分担者・福永浩司は,米国ワシントンD. C.において開催された第26回北米神経科学会に出席し,研究成果を発表した。また,その際に,共同研究者のT. R. Soderling博士に会い,共同研究について討論し,情報を交換した。特に,LTP誘導時における遺伝子発現の増強に関する共同研究について討議した。核内に存在し,転写因子の燐酸化反応,活性化反応に関与するCaMキナーゼIVの供与を受けた。本酵素についても研究対照とする予定である。
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