腎、心及び肺の病態におえるNa, K-ATPase遺伝子の発現調節機構

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07044289
• 研究機関: 自治医科大学
• 研究代表者: 川上 潔 自治医科大学, 医学部, 助教授 (10161283)
• 研究分担者: BENZ Edward ジョンスポプキンス大学, 医学部, 学部長 ; INGBAR David ミネソタ大学, 医学部, 助教授 ; 小林 麻己人 自治医科大学, 医学部, 助手 (50254941) ; 武藤 重明 自治医科大学, 医学部, 講師 (40190855)
• キーワード: 高浸透圧 / 血清刺激 / Na, K-ATPase遺伝子 / シスエレメント / 培養心筋細胞 / 核抽出液 / 肺発生 / 発現調節機構

研究概要

腎の系については、高浸透圧や血清刺激によってNa, K-ATPaseα1及びβ1サブユニット遺伝子の発現が血管平滑筋においても誘導されることや、またその誘導が転写レベルで起こることなどを明らかにした。これらの刺激に対する遺伝子上の反応性エレメントを同定するために、Na, K-ATPaseαおよびβ1サブユニット遺伝子をルシフェラーゼレポーター遺伝子に融合して一過性形質転換を行った結果、α1では3倍、β1では6倍程度の活性上昇が見られた。エレメントの局在については解析中である。
心の系については、α3サブユニット遺伝子の制御エレメント及び、制御因子を培養心筋細胞を用いた一過性形質転換法と、核抽出液を用いたゲルシフト、フットプリント法などで解析した結果、NF-Yの結合するエレメントが1カ所Sp1/Sp3の結合するエレメントが2カ所存在し、各々正の制御エレメントとして機能した。これら3カ所のエレメントは協同性をもって働くことも明らかとなった。
肺の系については、高酸素反応性エレメントをNa, K-ATPaseβ1サブユニット遺伝子の5'上流域-84から-44に見いだした。同領域には2カ所のSp1/Sp3結合コンセンサスが観察されたが、これらは、高酸素に対する反応性とは無関係であった。また、胎児および成体ラットの肺の核抽出液を調製し、Na, K-ATPaseα1サブユニット遺伝子の試験管内転写系を確立できた。この系を用いた解析によって胎児と成体とにおけるNa, K-ATPaseα1サブユニット遺伝子の発現量の相違をほぼ再現できた。成体においては、-375から-201の領域に負の制御エレメントが、存在することを明らかにした。また、胎児では、-155から+31の領域で十分な転写活性が保たれているのに対し、成体では、+66から+92の領域がさらに必要となることも明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Kawakami, K.: ""Structure, function and expression of a murine homebox protein AREC3, a homologue of Drosophila sine oculis gene product, and implication in development."" Nucl. Acids Res.24. 303-310 (1996)
• [文献書誌] Muto, S.: ""Differential regulation of Na^+ -K^+ -ATPase gene expression by corticosteroids in vascular smooth muscle cells."" Am. J. Physiol.270. C731-C739 (1996)
• [文献書誌] Ohtaka, A.: ""Hyperosmolarity stimulates Na, K-ATPase gene expression in inner medullary collecting duct cells."" Am. J. Physiol.270. F728-F738 (1996)
• [文献書誌] Kawakami, K.: ""Characterization of the core promoter of the Na^+/K^+ -ATPase α1 subunit gene : Elements required for transcription by RNA polymerase II and III in vitro."" Eur. J. Biochem.237. 440-446 (1996)
• [文献書誌] Ikeda, K.: ""Cis-elements involved in differential expression of Na, K-ATPase α2 subunit gene in muscle differentiation."" Biochem. Biophys. Acta.1308. 67-73 (1996)
• [文献書誌] Kawakami, K.: ""Identification and expression of six family genes in mouse retina"" FEBS Lett.393. 259-263 (1996)
• [文献書誌] Kobayashi, M.: ""Phosphorylation of ATF-1 enhances its DNA binding and transcription of the Na, K-ATPase α1 subunit gene promoter."" Nucl. Acids Res.25. 877-882 (1997)
• [文献書誌] Murakami, Y.: ""Promoter of the Na, K-ATPase α3 subunit gene is composed of cis elements to which NF-Y and Sp1/Sp3 bind in cardiac myocyte."" Biochem. Biophys. Acta.(in press). (1997)