研究課題/領域番号 |
07044292
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
金井 好克 杏林大学, 医学部, 講師 (60204533)
|
研究分担者 |
楯 直子 杏林大学, 医学部, 助手 (00201955)
武田 理夫 杏林大学, 医学部, 助手 (40255401)
遠藤 仁 杏林大学, 医学部, 教授 (20101115)
NUSSBERGER S ハーバード大学, 医学部, 助手
HEDIGER Matt ハーバード大学, 医学部, 助教授
HEDIGEL Matthias a Harvard Medical School
|
研究期間 (年度) |
1995
|
キーワード | グルタミン酸 / トランスポーター / 中枢神経系 / 神経伝達 / 神経毒性 / 興奮毒性 / 膜輸送 |
研究概要 |
グルタミン酸トランスポーターは、脳内の主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸を細胞内に取り込むことにより、シナプス伝達を終結させ、神経細胞をグルタミン酸の興奮毒性から保護する役割を果たしていると考えられてきた。本研究は、グルタミン酸トランスポーターの神経系における機能的役割を明らかにすることを目的として、分子レベル、遺伝子レベル、組織個体レベルでの解析を行った。 1.グルタミン酸トランスポーター分子の機能的性質の解析 グルタミン酸トランスポーターEAAC1をXenopus卵母細胞に発現させ、一分子のグルタミン酸の輸送が、二つのNa^+の共輸送、一つのK^+、OHの対向輸送と共役することを明らかにした。この化学量論より、グルタミン酸トランスポーターは、正常な電解質環境下では、グルタミン酸を細胞外に対して細胞内に約10,000倍の濃度比で濃縮できることが示唆され、細胞外のグルタミン酸濃度を低値に保つ役割を担い得る機能的特性を有していることがクローニングされたグルタミン酸トランスポーターにおいて確認された。 2.グルタミン酸トランスポーターの構造機能相関の解析 グルタミン酸トランスポーターの基質結合部位同定の目的で、グルタミン酸トランスポーターのアイソフォーム間の薬物感受性の違いを利用したキメラ解析を行った。グルタミン酸トランスポーターGLT-1はグルタミン酸取り込み阻害薬ジヒドロカイニン酸(DHK)によってそのグルタミン酸取り込みが抑制されるが、他のアイソフォームEAAC1はDHKによって抑制されない。この両者のキメラcDNAをrecA^+の大腸菌を用いた相同組換により得た。キメラcDNAはXenopus卵母細胞に発現させ、DHKに対する感受性を検討した。膜貫通領域6から7にかけての領域を境にDHK感受性が大きく変化し、この領域内にDHK感受性の決定に与る構造が存在することが示唆された。さらに別の観点から基質結合部位同定の手掛かりを得るために、基質選択性の異なる新しいNa^+依存性中性アミノ酸トランスポーターASCT2のcDNAを単離した。キメラ解析から得られたDHK結合領域と、ASCT2とグルタミン酸トランスポーターの一次構造と機能的性質の比較から得られた基質結合部位に関する情報をもとに、部位特異的変異導入による解析が進行中である。 3.グルタミン酸トランスポーターの発現の組織分布の解析 ラット脳よりEAAC1cDNAを単離して、in situハイブリダイゼーション法による、ラット脳におるグルタミン酸トランスポーターEAAC1の詳細な発現の分布を検討した。EAAC1は中枢神経系においては、神経細胞得異的に発現し、グルタミン酸作動性神経細胞のみならず、他の神経細胞にも発現していることが明らかになり、EAAC1が神経伝達のみならず、神経細胞内の代謝にとっても重要な役割を果たしていることが示唆された。 4.グルタミン酸トランスポーターのゲノミックDNAの解析 マウスEMIBL3ゲノミックライブラリーから、EACC1 5'-末端プローブを用いて全長約15kbにわたるゲノニックDNAを単離した。DNAシークエンシング及びCATアッセイによる解析が進行中である。 グルタミン酸トランスポーターのin vivoにおける機能的役割の解析 EAAC1アンチセンスオリゴDNAの脳室内投与を行った。EAAC1アンチセンスDNAは、神経細胞脱落は生じなかったが、高率に痙攣を誘発し、平行して行ったグリア型トランスポーターGLT-1、GLASTのアンチセンスDNAが主に神経細胞死を起こし、痙攣誘発効果は弱かったのと対照的である。 本研究は、従来から想定されてきたグルタミン酸トランスポーターの機能的役割に関して、分子生物学的手法を用いて実験的根拠を提供した。本研究の成果は、さらに構造機能相関及び遺伝子発現調節機構の解明へ向けた基礎的データとなり、病態の理解、特異的作用薬の開発へ向けた研究への出発点となることが期待される。
|