研究課題/領域番号 |
07044295
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
垣生 園子 東海大学, 医学部, 教授 (30051618)
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研究分担者 |
ZINKERNAGEL アール エム Institute of Experimental Immunology Uni, Director
佐藤 健人 東海大学, 医学部, 助手 (50235363)
ZINKERNAGEL Rolf Martin Institute of Experimental Immunology University of Zurich・Director・Switzerland
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研究期間 (年度) |
1995
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キーワード | トレランス / T細胞レセプター / トランスジェニックマウス / OVA / サイトキン / Th1 |
研究概要 |
本研究は、特定T細胞クローンの動態を追跡できるT細胞レセプター(TCR)トランスジェニックマウス(Tg)を用いて、抗原特異的免疫寛容とその破綻を誘導する系を作製して、自己免疫疾患の発生機序解明の一助となることを目指している。本年度は主として前半の寛容誘導系を検討し、以下の成果を得た。 1。抗原(OVA)の経口投与による寛容誘導 1)脾臓T細胞の免疫機能の抑制: (a)クロノタイプ抗体作製により殆どのT細胞はOVA特異的CD4+細胞であることを確認した。(b)OVA飼料で2-3週間飼育されたマウスより得た脾細胞をin vitroでOVAを再刺激すると、IL-2 及びIFN-γ産生の著しい低下が見られた。しかし、IL-2添加により両サイトカイン産生能は回復した。IL-4産生は著変なかった。すなわち、Th1細胞機能が抑制されたアナジー状態が2週間の連続経口刺激により誘導された。(c)in vitroの再刺激による抗原特異的T細胞の増殖は抑制されていた。(d)抗原特異的或いは非特異的標的細胞に対する細胞傷害性を検討したが、いずれも誘導されていなかった。 2)血清IgE値の低下: OVA飼料で飼育されたマウスの血清IgEの値は低下していた。 3)腸管(局所)粘膜上皮間Tリンパ球(IEL)の活性化: (a)in vitroによる再刺激のない状態におけるIELでは、IL-2及びIFNγの発現は脾臓に比較して高かった。(b)抗原特異的CTL、LAK活性及びNK活性の増強が認められた。(c)IELの内増殖したサブセットはCD8α/α細胞のみで、抗原特異的CD4+細胞数に変化はなかった。 (b)及び(C)は抗原刺激により活性化されたCD4+細胞によるTh1型のサイトカイン産生の結果であることが示唆される。 以上、抗原の投与によりin vivoで脾臓T細胞に抗原特異的アナジー潜在能を誘導することに成功した。従来の方法では、経口投与に加えて腹腔或いは静脈からの抗原刺激が必要であったため、どこでどのようにしてアナジーが誘導されるか不明瞭であった。本実験でどのようにしてアナジーが誘導されるか不明瞭であった。本実験系では、腸管粘膜局所でのT細胞は活性化されていることから、少量抗原の持続的刺激が脾臓T細胞のアナジーをin vivoで誘導していることを明確にした。 2。胸腺外自己抗原に対する反応系モデルの作製: 1)OVA発現トランスフェクタントの移植:分泌型OVA発現の同系細胞トランスフェクタントを作製し、皮下に移植することにより持続的に少量の抗原を提示する胸腺外自己抗原にみたてた系とした。移植局所リンパ球にはキラー活性が亢進していたが、サイトカイン発現は低かった。脾細胞ではOVA刺激によるサイトカイン産生は高くなかった。脾臓にはクロノタイプ陽性CD4+細胞が存在し、胸腺内でもDP細胞の排除は誘導されなかった。すなわち、分化成熟したT細胞は末梢で抗原特異的に抑制されていることが示唆された。 2)OVA-Tgマウスの作製:OVA遺伝子を分泌型と膜型に構築し、インシュリンのプロモーターを結合してマウス受精卵に導入した。現在ファウンダーに於ける導入遺伝子の発現を検索中である。 共同研究社Zinkenagelらの系による誘導では、末梢T細胞のアナジーが充分誘導できなかったので、今後は以上の抗原特異的免疫寛容を誘導した系を用いてその破綻誘導を試みる。本TCR-TgマウスのT細胞はMMTウイルスをスーパー抗原として認識するので、本研究結果とモデルマウスを共同研究者であるZinkernagelと分担してMMTウイルス感染によって破綻誘導を検討する。(なお、2年計画であった本研究の助成は単年で打切られているが、続行する。)
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