研究課題/領域番号 |
07044320
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 埼玉県立がんセンター |
研究代表者 |
藤木 博太 埼玉県立がんセンター研究所, 副所長 (60124426)
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研究分担者 |
LIM In Kyoun Ajou University School of Medicine Assis, 教授
林 慎一 埼玉県立がんセンター研究所, 生化学部, 主任研究員 (60144862)
末岡 榮三朗 埼玉県立がんセンター研究所, 血清ウイルス部, 研究員 (00270603)
菅沼 雅美 埼玉県立がんセンター研究所, 血清ウイルス部, 主任研究員 (20196695)
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研究期間 (年度) |
1995
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キーワード | 肝発がん / ノジュラリン / 肝発がんプロモーター / アンドロゲンレセプター / エストロゲンレセプター / 初期応答遺伝子 / TNF-α / 内因性発がんプロモーター / Gene expression |
研究概要 |
肝臓がんの発生に関する分子生物学的研究 ヒト肝がんの発生は主として男性に多い。この現象は肝がんの多い韓国、中国、アフリカにおいて認められ、日本においても同様である。したがって、肝がんの発生と男性ホルモンとの関連について研究することが重要と考えられている。例えば肝がんの発生の過程に男性ホルモンの作用に異常が生じるのか検討することは重要と思われる。私共の研究グループは、ラット肝発がん二段階実験系を用いて、肝発がんの初期のステージであるプロモーションの時期を分子生物学的に研究してい る。この系における性ホルモンレセプターの異常、例えば突然変異あるいは欠失などを明らかにすることを目的とし研究を進めた。 F344雄ラットにジエチルニトロサミン(DEN)200mgを1回腹腔内投与しイニシエーションとし、2週間後より肝発がんプロモーターであるノジュラリンを週2回、計10週間腹腔内投与し、肝発がん二段階実験を行った。実験開始後12週に各実験群より肝臓を摘出し、免疫組織染色を行い、前がん病変の指標であるGST-P陽性巣の誘導を指標にノジュラリンの肝発がんプロモーション作用を証明した。発がんプロモーションの過程における初期応答遺伝子、ホルモンレセプターの発現の変化を解析するため、2週毎にラット肝より、RNA、DNAの抽出を行った。 ノジュラリンを1回腹腔内投与すると標的臓器であるラット肝においてjunおよびfosファミリー初期応答遺伝子、あるいは内因性発がんプロモーター、TNF-αmRNAの発現を強く誘導した。これら遺伝子の発現は長時間持続する傾向を示した。この結果はノジュラリン投与によってこれらmRNAの安定化がもたらされたと考えられる。現在mRNAの安定化の面からノジュラリンの肝発がんプロモーション作用を検討している。 次に、肝発がんプロモーションの過程における性ホルモンレセプターの関与を検討するため、アンドロゲンレセプターおよびエストロゲンレセプターmRNAの発現を解析する定量的RT-PCRの系を確立した。この系を用いることにより、ラット肝及び初代培養肝細胞における、アンドロゲン及びエストロゲンレセプターmRNAの定量が可能になった。ラット肝発がん2段階実験より得られたRNAを用いて、プロモーションの各ステージにおけるホルモンレセプターの発現の量的変化を解析中である。 さらにヒトのがん組織に認められるアンドロゲンレセプターの遺伝子変化が肝がんにおいても認められるか肝発がんプロモーションの各段階において、ラット肝よりDNAを抽出し、アンドロゲンレセプターの突然変異、欠失等について検討している。 以上の研究内容をより効率よく行うため韓国側研究協力者であるAjou大学、Lim博士の研究室との交流を積極的に行った。平成8年2月には日本側研究者5名が訪韓し、Lim博士の研究室のスタッフに加えてソウル国立大学医学部研究者とともに研究打ち合わせを行い、最近の研究成果を発表し意見交換を行った。さらにLim博士の研究室のスタッフを科学技術庁フェロ-シップ(STA)の援助で日本に招き実験の交流を初めて行った。
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