研究分担者 |
BRULS George Frankfurt大学, 理学部, 助教授
LUTHI Bruno Frankfurt大学, 理学部, 教授
鈴木 孝至 広島大学, 理学部, 講師 (00192617)
落合 明 新潟大学, 工学部, 助教授 (90183772)
吉原 章 東北大学, 科学計測研究所, 助教授 (40166989)
吉澤 正人 岩手大学, 工学部, 教授 (30220619)
長谷川 彰 新潟大学, 理学部, 教授 (40004329)
藤田 敏三 広島大学, 理学部, 教授 (20004369)
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研究概要 |
重い電子系,高温超伝導体、有機伝導体などの強相関電子系の解明は現代物理学の重要課題であり、国内外で急速な発展を示している.国内では,伝統的に磁気測定が重視されてきたが、超伝導のBCS機構に見られるように、電子一格子相互作用はこれらの物質の多彩な物性に本質的な役割を果たしている。この間,日独双方の申請者らは,超音波、ブリュアン散乱,磁歪などの音響分光法を確立し,多彩な研究成果を挙げている.日独共同研究では,極低温,強磁場,圧力などの極端条件下での超音波などの音響計測法の開発を進め,強相関電子系での電子一格子相互作用の特徴を明かにし、特異な磁性,超伝導の解明を目指す.次のような具体的課題を設定した. (1) f電子系の四重極応答 Luthiの先駆的研究により、希土類化合物の弾性定数,熱膨張や磁歪の温度磁場依存性は,結晶場状態を反映した四重極一歪み相互作用に微視的な起源をもつ四重極応答として理解されている.本研究では四重極をもつ基底状態の四重極相転移,重い電子系の近藤collapseや異常なGruneisen定数,価数揺動物質の電荷揺動,ウラン化合物のΓ_3基底状態の四重極近藤効果などの解明を進める。 (2) 超伝導と電子一格子相互作用 藤田、鈴木による高温超伝導体La_<1-x>Sr_xCuO_4の弾性定数の特異な磁場依存性の発見に代表されるように,弾性定数や熱膨張は超伝導相で顕著な異常を示す。吉澤により重い電子系超伝導体,有機超伝導体などの研究が進められているが,s波かd波かをめぐる超伝導の対称性,BCS機構の寄与など依然として未解決である.本研究では,Brulsらによる重い電子系超伝導CeCu_2Si_2の研究を踏まえ,超伝導と反強磁性との共存、超伝導の秩序変数の対称性,磁束構造や電子一格子相互作用の特徴を解明する. (3) 音響ドハース効果とフェルミ面 弾性定数の量子振動は音響ドハース効果と呼ばれ,フェルミ面における電子一格子相互作用を定量的に決定できる唯一の手法である.後藤は大型希釈冷凍機に二軸ゴニオを組み込むなど,極低温での重い電子系の精密実験を進めるとともに、音響ドハース効果の理論を確立した.長谷川は相対論的バンド計算、落合は純良単結晶をもちいた小数キャリア系、重い電子系の研究を進めている。本研究では、日独双方で育成された純良単結晶を用い、強相関電子系の音響ドハー
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ス効果と電子一格子相互作用に関する系統的研究を行なう。 (4) ブリュアン散乱と低次元系 吉原はタンデム型ファブリペロ-干渉分光器を用いたブリュアン散乱装置を開発し,金属磁性体,人工格子のマグノンおよびフォノン分光を行なっている.本研究では低次元スピン系のマグノンとフォノンのエネルギー分散や異方性を測定し,マグノンエネルギーギャップおよびスピン-フォノン相互作用の微視的機構を解明する. 平成7年度には文部省科学研究費補助金(国際共同研究“強相関電子系の電子一格子相互作用"研究代表者;後藤輝孝)の援助を受け日独共同事業を開始した。平成7年度には、後藤、長谷川、落合、吉澤、鈴木がドイツ出張を行なった。この間、近藤系での四重極応答、重い電子系、超伝導、音響ドハース、低次元スピン系などの日独双方における超音波などの音響分光研究の進展は著しい。また、極低温、圧力、パルス強磁場などの複合極端条件での超音波実験も日独双方で計画されて、日独の技術交流も緊急の課題であることが認識された。後藤とLuthi,Brulsは日独双方の希釈冷凍機を用いた極低温での共同実験が開始した。吉澤は、Luthi,Brulsと有機導体や重い電子系超伝導の共同研究を開始した。Frankfurt大学以外とも活発な共同研究が進められている。長谷川はKubler教授(Darmstadt工科大学)とf電子系のバンド計算,落合はSteglich教授(Darmstadt工科大学)と小数キャリアー系の極低温実験を進めている。鈴木は高温超伝導の超音波実験を進め、Guntherod教授(Aachen工科大学)と共同研究を開始した。藤田は、Fulde教授(Max Planck研究所,Dresden)と異方的超伝導のFFLO相に関する共同研究を開始した。吉原は、Guntherod教授(Aachen工科大学)とブリュアン散乱の共同研究を予定している。 本国際共同研究は、平成8年度からは日本学術振興会日独共同事業に引き継がれ、日独双方からの研究者交流を進め共同研究が予定されている。平成8年9月には、ドイツ側主要メンバーの来日が予定されている。これを機会に、日独共同事業に参加している日独研究者を中心としたワークショップ Electrons and Phononsin Strongly Correlated System(1996年、9月14、15日;新潟大学、主催者 後藤輝孝、長谷川彰)を開催し、研究成果の取り纏めを行なう。 隠す
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