研究課題
国際学術研究
本研究は中央アジアの主要民族であるカザフ人の文化的持続性と変容を現地調査に基づいて解明することを目的としている。特に1991年、旧ソ連から独立してナショナリズムと民族主義の両立を模索するカザフスタンの動向に研究の焦点を置いた。そのため、現地調査を実施し、次の諸点を明らかにすることが出来た。(1)カザフスタンは、かつて旧ソ連のマイナ-な一部で、特に1930年代、ロシア人の苛酷な支配を受けたこと及びスターリンの少数民族政策の実体を知り得た。(2)にもかかわらず、新生国家カザフスタンの責任民族であるカザフ人は、国内に多くの民族集団を抱える中で、国民国家を創造、維持するために、ナショナリズムの教育をしていること。(3)19世紀のカザフ民族詩人アバイやジャンブルなどを国民統合の象徴として起用し、その生誕150年記念行事を盛大に挙行するなど、国家的アイデンティティ形成策が行われていること。(4)言語教育を重視し、特にカザフ語を国語とするが、従来から中心であったロシア語を共通語として配慮し、また英語教育を重視して国際化に対応しようとしていること。(5)シャマニズムなど、ソ連時代に抑圧されていた民間信仰の再浮上現象があり、これに関する新たな知見が得られた。(6)カザフスタンでは、日本との経済的、学術的交流への意欲が強く、文部省及び国立カザフスタン大学からは、われわれとの大学間交流協定締結への強い意欲を表明された。
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