研究課題
平成7年度の成果の概要は、次の通りである。1.「安楽」「安寧」に関するわが国の研究的取り組みは、その多くが看護実践の中に見られる。しかし、概念的に、また看護の質として統合された研究はごく少ないという実態を知ることができた。本研究者の研究会で招いた、ナイチンゲ-ルの研究家として知られる金井氏においても、ナイチンゲ-ルの論文を「安楽」「安寧」の視点から捉えたということは始めての試みといっている。また社会学者でもある小野殖子氏も同様に捉えており、研究者と両者との間で、本研究の重要性を再確認する結果となった。2.アメリカ側の文献調査からは、「安楽」「安寧」の研究が1991年頃より急速に取り組み始められている傾向が見られる。しかし、それもまだ概念化の段階であり、分析・活用・組織化に至っていないと思われる。さらに、「安楽」「安寧」を看護の質の評価に実際に活用するのは今後の研究に待つところである。アメリカにおける平成7年度の調査結果から人種間での「安楽」「安寧」に対する感じ方及び性差による相違が予測され、本研究が看護の質的研究として活用でき、また文化的背景による看護の基本への示唆が期待できると推測され、研究者間の関心が高まる。3.「安楽」「安寧」が単に身体的、精神的側面だけでなく、社会文化的条件が深く関わり、絡み合っている現状が国際比較から導き出せることが推測できることから、社会文化的条件による比較を強調することの必要性を感じ、平成7年においては、更にもう一カ国を追加できないか具体的検討を始めている。4.患者に対する「安楽」「安寧」を中心とした精神看護(リエゾンナース)の専門家の存在の必要性について今後の検討に加える必要がある。5.国際間で共通する質問紙は、分化の違いをどのように考慮するかで苦慮する。面接方法は、それらを補うにはよい方法と考えられるが、しかし、調査員の事前の合意が十分になされる必要がある。以上を踏まえて関係者の「安楽」「安寧」の研究に対する熱意は強いものがあり、平成8年度に期待する。
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