研究概要 |
タンル-断層系に沿う大規模な横ずれ断層運動は東アジアのテクトニクスを解明するうえで重要である。本研究は野外調査及び古地磁気・年代測定にもとづいて、タンル-断層系の活動時期・変位量を明らかにすることを主な目的としている。平成7年度に行った福建省〜広東省の野外調査で,小規模な白亜紀堆積盆のいくつかは断層運動に伴う明瞭な構造堆積盆であることが判明してきた。より質の高いタンル-断層系の研究を行うために,そのような構造盆地の複数の地点で,白亜紀赤色砂岩層から500個を越える古地磁気測定用試料を採集した。今年度の調査及び研究で明らかになった点を次に述べる。 1.華南ブロックの赤色砂岩を系統的に測定し,古地磁気データを初めて明らかにし,口答発表した[地球電磁気・地球惑星圏学会(1996.10)]。従来、古地磁気データがない地域なのでその成果が注目された。 2.ジュラ紀〜白亜紀の赤色砂岩の古地磁気測定から,白亜紀には華南ブロックには断層運動に伴う大規模な緯度変化がみられないことを明らかにした。 3.タンル-断層帯にプル・アパート起源の堆積盆を見つけ,その形成メカニズムについて口答発表を行う[日本地質学会第102年学術大会講演要旨(1996.4); 30th IGC Meeting,Beijing (1996.8)]。Tectonophysicsに投稿予定。 4.タンル-断層帯中の白亜紀層に挟在する酸性凝灰岩層を確認し,FT年代の測定試料を採集し,一部130MaのFT年代を得た。タンル-断層帯の横ずれ運動の時期については,中国研究者の間でも議論があり,このデータは注目される。さらに,採集した試料の年代測定を行い,発表していく予定である。
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