研究概要 |
トリアス紀後期以後、東アジアには著しい横ずれ運動のイベントが推定され,タンル-断層帯はその中心的な役割をもつと考えられる。したがって,その断層帯の横ずれ断層運動の実態を明らかにすることは、東アジアにおける中生代後期のテクトニクスを解明するうえで重要である。平成8年度の山東省の野外調査は,(1)タンル-断層帯の東西両側に分布するジェラ紀から後期白亜紀までの赤色砂岩の古地磁気試料の採集(300個)と,(2)酸性凝灰岩のFT年代試料の採集と,(3)タンル-断層帯の断層岩・運動履歴の観察とその解析を行った。今年度の調査及び研究で明らかになった点を次に述べる。 1.断層周辺の赤色砂岩の古地磁気結果(西向き偏角)はタンル-断層系の左横ずれを示唆している。さらにタンル-断層中部の測定試料を加えて検討する予定である。 2.タンル-断層帯に沿う白亜紀堆積盆が横ずれ堆積盆の特徴をもつことを明らかにし,北京で開催された30thIGC Meeting (1996.8)で講演し,質問・評価を得た。現在,投稿する現行を作成している。 3.タンル-断層帯に沿う陸生層の年代は従来大まかに後期白亜紀と推定されていたが,挟在する酸性凝灰岩層から81.8Maと82.4MaのFT年代を得て、その形成年代が後期白亜紀Campanianであることを明らかにした。さらに,測定値を増やして検討する予定である。 4.タンル-断層帯の主断層F_3の断層破砕帯の構造解析から、主断層F_3の断層運動は優勢な左横ずれであることが判明した。本調査で主断層F_3がその断層破砕帯を覆う第三紀玄武岩質溶岩を切れていないことも確認し,主断層の左横ずれが先第三紀,おそらく白亜紀であると結論されるので,論文にして報告する予定である。
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