研究概要 |
東アジアの白亜紀テクトニクスを理解するうえで,タンル-断層系の横ずれ運動は重要である。本研究はタンル-断層系の横ずれ運動の実態と時期を明らかにすることを目的としている。そこで,タンル-断層帯の変形構造,断層岩の非対称構造及び白亜紀堆積盆をおもに調査し,白亜紀古世から新世の赤色砂岩を28サイトで280個採集し,古地磁気測定を進めた。今年度の調査及び研究で明らかになった点を次に述べる。1.横ずれ変形:タンル-断層帯に沿う白亜紀層に発達する褶曲構造の解析から,褶曲軸が左雁行配列することを明らかにした[地球惑星科学関連学会合同大会(1997.3.26),日本地質学会第104年学術大会(1997.10.12)]。断層岩の解析にもとづくいて左横ずれ変位を明らかにした[Tectonophysics(印刷中)]。山東省のタンル-断層帯はカタクラサイトを伴うが,マイロナイトは見られない。2.横ずれ堆積盆:堆積盆調査にもとづいて,タンル-断層帯に白亜紀プル・アパート堆積盆の存在を明らかにした[地質科学(印刷中)]。また堆積様式の解析から,馬站堆積盆ではタンル-断層(主断層F_3)に沿う堆積中心の移動(北進)を明らかにし,この移動量から横ずれ変位量を60km以上と試算した[The Island Arc(発表予定)]。3.横ずれ運動の時期:華南ブロックの赤色砂岩から得られた白亜紀古世と新世のVGPを比較すると,横ずれ変位に伴う華南ブロックの反時計回転がおもに白亜紀古世から新世にかけて,すなわち断層に挟まれた堆積盆の成長時期に起こったと考えられる。FT年代及び化石年代の検討[地質力学学報(印刷中)]から,タンル-断層帯の左横ずれ運動は白亜紀新世にまで及び,中央構造線の左横ずれの時期と共通することが明らかになった。
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