研究概要 |
トリアス紀新世以降,東アジアには大規模な横ずれイベントが推定され,タンル-断層系はその中心的な役割をもつと考えられる。そこで,タンル-断層系の横ずれ運動の実態を明らかにするために,タンル-断層系に沿う白亜紀古世と新世の赤色砂岩の古地磁気(VGP)測定とタンル-断層の横ずれ変形と横ずれ堆積盆の地質調査を重点的に行った。これまでに得られた成果を次に述べる。1.古地磁気(VGP)の結果:(1)タンル-断層系に挟まれた白亜紀層(赤色砂岩)のVGPは周辺地域の白亜紀層のVGPに対して西振りの偏角をもつことが判明した。また,(2)タンル-断層系に挟まれた白亜紀古世の赤色砂岩のVGPは白亜紀新世のそれに対して西振りの偏角が大きいことが明らかになった。(1)・(2)の結果から,タンル-断層系に挟まれたブロックは白亜紀古世から新世に,とくに新世の堆積盆成長時期に反時計回りの回転をしたと考えられる。2.横ずれ変形:(1)山東省のタンル-断層に沿う白亜紀層の褶曲構造を系統的に解析し,タンル-断層に対して褶曲軸跡が左雁行配列することを明らかにした。(2)タンル-断層の断層岩の観察・解析から,左横ずれの運動センスを明らかにした。(3)断層岩はカタクラサイト,断層角礫を主体とし,マイロナイトは確認できない。(4)第三紀玄武岩や第四紀層はその断層岩を不整合に覆われており,タンル-断層によって切られ変位していない。以上の点から判断すると,タンル-断層は第三紀以前に,おそらく白亜紀新世に顕著な左横ずれ断層運動をしたと考えられる。3.横ずれ堆積盆:白亜紀新世の馬站堆積盆を地質調査し,堆積中心がタンル-断層の走向にほぼ平行に移動(北進)した横ずれ堆積盆であることを明らかにした。その形成メカニズムをタンル-断層の減圧(解放性)屈曲に形成されるプルアパート・モデルで説明した。また,その堆積中心の移動量から横ずれ変位量を試算した。
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