研究課題
国際学術研究
大阪大学接合科学研究所とオーストラリアのウォロンゴン大学との大学間協力研究として以下の目的を設定し、大出力マイクロ波やプラズマあるいはイオンを利用した新しい電磁加熱プロセスに関する研究を平成7年度から2年間にわたって遂行してきた。1.従来より優れた性能を持つニューセラミックスならびに、これらの複合化・傾斜構造化による新しい機能性材料の創製を目指す。2.電磁場や荷電粒子とこれらの材料の相互作用を微視的立場から解明し、従来の熱的なプロセスとの比較を行う。3.さらに、これらの機能材の接合研究により新しいプロセスとしての完成をめざす。4.以上の研究内容を共同に持ち寄り討議するため、平成7年度ならびに平成8年度の両年度に、日本・オーストラリア間の国際共同シンポジウムにおいて、研究成果について学術討論を行うと共に、新しい材料合成・加工科学の開拓に貢献し、国際協力の実を上げる。本研究で得られた成果を以下にまとめる。まず、上記の1のテーマについて、高融点で且つ仕事函数が低く、さらに酸素あるいは塩素などの反応性ガスを含む雰囲気における耐消耗性に優れたプラズマ用新電極材料としてTaCおよびHfCに注目し、アルゴン高周波プラズマによる燒結と得られた燒結体の電極特性を調べた。その結果、TaCは燒結時間を十分長くとれば燒結助材の添加無しでも、90%以上の相対密度が得られ、また塩素を含むアークプラズマ雰囲気中で安定した電極特性を示した。一方、HfCは金属Hf粉を30%添加することによって、燒結密度の大幅な上昇が認められ、また得られた燒結体より作製した電極は空気プラズマ中で、従来電極より優れた特性を示した。次いで、2番目の目的のうち電磁波と材料との相互作用については、電磁波中でのセラミックス焼結特性を従来の熱的プロセスとの比較ならびにセラミックスの放射する赤外線スペクトルに重点をおいて研究を遂行した。周波数28GHzのミリ波帯電磁波を用いて、窒化珪素ならびにジルコニアの焼結実験を行い、従来の電気炉よりも低温かつ短時間の内に緻密化が進行し、著しい粒成長を伴うことなく緻密な焼結体を作製することが可能であることを明らかにした。特に、窒化珪素の焼結においては、焼結過程における窒素雰囲気の圧力が焼結特性に与える影響を明らかにすると共に、曲げ強度として1GPaを越える実用近い特性の焼結体が作製可能であることを示した。また、高強度の電磁場中で加熱されたセラミックス試料から放射される赤外線スペクトルの計測により試料の温度ならびにその誘電特性を予測する手法の開発を行い、従来の2色放射温度計等に比べ温度計測の精度が向上することを示すと共に、焼結過程での電磁波の吸収特性の予測にも有効であることが示された。さらに、荷電粒子との相互作用に関して、特に(Ti、Al)N系窒化物セラミックスの合成について研究を行い、イオン照射による熱的に非平衡な反応場が相構造および微視的構造に及ぼす効果を明らかにした。3.の機能材の接合研究に関する基本的な問題として、異種材料薄膜を基材に形成する際における剥離のメカニズムを力学的に解明することをテーマとして着目し、ひずみエネルギー開放率に基づいて残留応力と座屈を考慮した有限要素法を開発した。さらに、4番目の目的として、以上の研究内容を共同に持ち寄り討議するため、平成7年度ならびに平成8年度の両年度に、日本・オーストラリア間の国際共同シンポジウムを開催し、研究成果の発表ならびに上記の電磁プロセスに関する国際的な学術討論ならびに情報交換を行った。本研究計画の初年度においては、平成8年3月にオーストラリア・ウォロンゴン大学にて国際共同シンポジウムを開催し、日本側・オーストラリア側双方から計13件の成果報告を行った。さらに、2ヶ年の共同研究全体のまとめと国際的学術討論を目的として、平成9年2月3日から2日間にわたって大阪大学接合科学研究所において国際共同シンポジウムを開催した。このシンポジウムでは、日本およびオーストラリアのみならず、米国、ロシア、ドイツから招へいした著名な研究者を加え、100名あまりの参加者により上記の電磁プロセスについて、22件の研究発表と共に活発な学術討論を行った。
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