研究課題
本研究においては、以下の項目について学際的な検討を行った。1.薬草の栽培試験:チェンマイ大学の高地農地(ノンホイ農場)において薬用人参を含む6種の日本薬草の栽培試験を行った。タイ北部山岳地域で薬用人参を栽培する場合、休眠種子の発芽促進が重要であり、種子の層積処理とジベレリン処理により十分な催芽種子が得られ、健全な芽生え固体が得られることが検証された。栽培試験では、薬用人参の2年目までの成長は確認できたものの、市場価値の発生する6年物の栽培には成功できなかった。一方、薬用人参以外の薬草類の栽培には成功をおさめ、特に市場性の高いトウキは現在試験場レベルから農民レベルへの普及を図りつつある。2.薬草の薬理効果の判定:近畿大学においてタイ国産薬草の薬効成分の抽出・同定を行い、高血圧自然発生ラットを使用して、高血圧、糖尿病に対する効果を測定、栽培条件が薬草の成長に与える影響について検討を行った。この結果,Memordica CharantiaやPhyllanthus Urinalisについては血糖降下作用を、Imperala Cylindricaについては降圧作用について薬としての利用可能性の確認ができた。3.薬草の市場性:タイ国薬草の中心の市場はバンコクにあり、生産者(採取人)->地方の仲買人->バンコクの仲買人を通じて、医薬・食品・化粧品産業、輸出、商店、消費者へと流通している。仲買人からの流通経路、薬草の価格に影響を及ぼす要因についても分析を行った。4.薬草栽培導入に伴う影響:薬草、果樹、野菜等の換金作物の導入に伴い、山岳民族によるケシ栽培・焼き畑農業は減少傾向にある。山岳民族の自立のためには薬草を含む換金作物の栽培技術の確立、実証的な栽培・普及に加えて、市場へのアクセスの改善、マーケッテイング組織の確立、金融などの付属的なサービスの提供など継続な対応が必要である。
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