研究分担者 |
GRANT Mary ストラスクライド大学, バイオエンジニアリングユニット, 講師
COURTNEY Jam ストラスクライド大学, バイオエンジニアリングユニット, 教授
BARBENEL Jos ストラスクライド大学, バイオエンジニアリングユニット, 教授
高久田 和夫 東京医科歯科大学, 医用器材研究所, 助教授 (70108223)
宮入 裕夫 東京医科歯科大学, 医用器材研究所, 教授 (50013892)
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研究概要 |
本研究期間を通じて英国側から提供された,患者から手術後3.3〜14年で摘出された骨セメント試料14検体につき,日本側で各種の分析を行った.まず安全性に最もかかわる骨セメント中に残留するメチルメタクリレート(MMA)モノマーの定量を高速液体クロマトグラフ法あるいはラマン分析法で行った.4検体では検出されなかったが,残りの10検体では0.1〜1.4%のMMAが残留していた.手術直後には5%程度存在したMMAも徐々に生体に溶出していた.生体内での存在期間との相関性はあまりなく,セメントの厚みが大きい部位では残留モノマーが多かった.サイズ排除クロマトグラフ法による分子量測定,示差走査熱量分析法によるガラス転移温度測定などの結果から,残留モノマー量は手術時のセメントの硬化状態の影響を強く受けることが推定された.以上のように,適用した骨セメントの部位により,その厚み,硬化状態が異なるため,残留モノマーにも分布が生ずることが明らかとなった.そうした場合,残留モノマーの溶出による不均等なセメントの体積収縮が起きることも予想され,それが臨床的に問題となっている骨セメントのゆるみの原因にもなり得ることが考えられた.ゆるみの原因はいまだにはっきりとしていないが,それに対する新しい見解が得られたことは今回の協力研究の成果である. 骨セメントの分析と平行して,骨セメント中の残留モノマーを減少させるような新しい骨セメントの試作を日本側が検討した.その中で,フッ素系ポリマーを配合することにより残留モノマーを低下させることができた試作品について,英国側で細胞培養法を利用して生体適合性の評価を行った.4種の試験を行ったところ,試作品では一部の試験項目において,やや細胞毒性が強くなる傾向が認められ,今後その原因を検討する必要がある.
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