研究分担者 |
林 忠輝 山東医科大学, 講師
ほう 培良 山東医科大学, 衛生学部, 助教授
張 衡 山東医科大学, 副校長
王 廷礎 山東医科大学, 校長
森岡 郁晴 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教授 (70264877)
山中 昇 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (10136963)
武田 真太郎 和歌山県立医科大学, 看護短期大学部, 教授 (70073690)
LIN Zhang Hui Shandong Medical University, Ent Attending & Lecturer
HAO Pei Liang Shandong Medical University, Associate Professor
ZHANG Heng Shandong Medical University, Vice President
WANG Ting Chu Shandong Medical University, President
|
研究概要 |
1.中国山東医科大学での事前打ち合わせ 農村住民1,091名を対象に実施した前回(1993年)の調査結果をふまえ,1995年6月4日〜7日に中国山東医科大学で事前の打ち合わせを行った。1995年の調査は山東医科大学内に新設された耳鼻喉科重点実験室の防音室を聴力検査の実施場所とし,知的理解度の高く,都市生活に伴う生活騒音やストレスの影響が多いと思われる都市生活者の聴力と生活様式を調査するとともに,前回調査の農村住民との対比を行うことにした。 2.本調査 1995年11月25日〜12月17日の間に,山東医科大学関係者とその家族,附属学校の児童,生徒,大学生,退職者を含む5歳〜84歳の1,301名,うち男684名(平均年齢30.4【+-】17.7歳),女617名(平均年齢31.0【+-】16.6歳)について,問診,耳科診察,気導聴力検査及び最高可聴閾を測定した。さらに,山東医科大学の医師による一般健康診断も同時に実施された。 3.調査結果の解析 調査結果については,現在両大学において解析中である。前回調査した農村住民のうち,20歳未満の若年者に多くみられた4kHz-dipあるいは高音部急墜型の聴力障害が今回の都市生活者ではほとんどみられず,最高可聴閾においても日本人と同様の20〜24kHzに達する耳が多くみられた。機械化されていない伝統的な農業を営む農村住民には,生活騒音や都市生活に伴うストレス等の影響が少なく,すぐれた聴覚の耳が多いであろうという仮説はこれらの結果から否定された。したがて,日本人の聴覚の正常加齢曲線と比較する際には,前回と今回の測定結果を合わせて作成される正常加齢曲線を用いることにした。 前回の調査と今回の調査の対象者のうち,騒音曝露歴または薬剤使用歴があって,気導聴力レベルの異常な低下を示した者,および原因不明の高度難聴の者を対象から除外した結果,正常耳となったのは3,827耳であった。測定した気導聴力のテスト周波数および最高可聴閾について年齢階級別にパーセンタイル値を求め,各パーセンタイルの加齢曲線を描き,by eyeによりスムージングを行った。対照となる日本人の最高可聴閾の加齢曲線は,我々がすでに報告した5,147耳のものを用いた。また,気導聴力レベルの加齢曲線は,同一対象耳から作成したものを用いた。その結果,中国人の最高可聴閾は、加齢に伴って穏やかに低下し,60歳以上では分布幅が徐々に広がっていた。日本人と比べ,50歳以上で穏やかに低下していた。中国人の4kHzの聴力レベルは加齢とともに穏やかに低下し続け,50歳以上では著しく低下し,分布幅も広がっていた。日本人と比べると,穏やかに低下していたが,70歳ではほとんど差がみられなくなっていた。他の周波数でも同様の傾向がみられた。以上の結果をもたらした要因は単純ではないが,中国が日本と比べて,生活騒音レベルが低いこともその一因としてあげられるであろう。 4.調査結果の検討会 6月14日〜20日において,山東医科大学から3名の研究分担者も出席して,調査結果の概要を話し合った。報告書の作成については,できるだけ早期に結果の解析を終了し,報告書を作成するが,その際には,日中両国で利用することができるように,本文を英文にした報告書を作成する方向で意見がまとまった。今後の調査結果の公表については,報告書が完成した後,その結果の一部を公表することが可能であることを確認した。最後に,結果解析の分担内容をもう一度確認した。
|