研究概要 |
抗原受容体遺伝子の再構成は、同じ組み換え酵素と共通のシグナル配列を用いているにもかかわらず、組織特異的、さらには分化段階特異的に厳密に制御されている。 当グループでは、トランスジェニックの系を用いて、免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子のV-J結合を抑制的に調節するDNAエレメントを、3′エンハンサー領域(E3′)に見出した(Hiramatsu et al.,Cell83,1113,1995)。このエレメントは負に働くユニークな制御因子であるため、基質の検定は、すべてトランスジェニックマウスを用いて行われた。その結果、E3′領域内のPU.1結合部位が、Vκ-Jκ結合のB/T特異性の制御に抑制的に働いていることが明らかにされた。即ち、PU.1結合モチーフGAGGAAを変異させるだけで、抗体κ遺伝子の再構成がB細胞のみならずT細胞でも生じることが示された。但しPU.1は正の調節因子である為、それそのものがVκ-Jκ結合の抑制因子であるとは考えにくい。当グループでは現在、ETSファミリーのメンバーでPU.1の働きと拮抗する抑制性のタンパク因子を検索している。 本研究により、E3′はVκ-Jκ結合の分化段階特異性の制御にも関与していることが示された。即ちE3′領域を欠失させると、通常preBの段階で生じるκ遺伝子の再構成がproBの段階でも生じる。現在、組み換えのproB/preB特異性を制御するE3′内のDNAエレメントを検索中である。 当グループでは最近、上記のPU.1結合領域が抗体κ遺伝子における体細胞突然変異の導入にも重要な働きを担っている事を見出した。現在、この領域に含まれるどの塩基配列が、高頻度突然変異導入の制御に関わっているかを検定している。
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