研究概要 |
1.内側側頭葉から新皮質連合野への逆向性信号が記憶の定着(consolidation)に果たす役割を明らかにすることに成功した(Higuchi,S.and Miyashita,Y.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93,739-743,1996)。片側傍嗅野にイボテン酸を注入して、通過線維の損傷無しに細胞体のみを選択的に破壊し、片側下部側頭野への逆向性信号を遮断した。この下部側頭野のニューロンは、刺激に反応する性質のほとんどは正常であったが対象物の連合性をコードする性質のみを選択的に失っていた。この事実は、本研究の開始時に設定した仮説の一つ(記憶定着機構についての仮説)が正しいことを支持している。 2.平成7年度研究計画調書に記載された実験のうち、[実験3]においても具体的進捗が得られた(Naya,Sakai & Miyashita,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,93,2664-2669,1996)。即ち、前頭葉と側頭葉の相互作用を調べる為に、従来の「対連合課題PA(Pair Association)task」に文脈依存性を導入した「色スイッチ対連合課題PACS(Pair Association with Color Switch)task」を開発して、側頭葉ニューロンが文脈依存的な記憶想起の必要性に性に応じて活性化されることを証明した。 3.PETに比較してfMRIの利点である時間分解能を利用して“transient t-map"を構成して“trial-base"の解析を行う方法を開発した(Konishi et al,,Neuroreport 8,19-23,1996)。この方法は、遅延見本合わせ課題のように一試行内に含まれる時間的に異なった要素(例えば、sample,delay,match)をfMRI信号上で直接分離する可能性を開く意義がある。 4.平成7年度研究計画調書[実験4-1]は、免疫組織化学による予備実験を完了した(Okuno & Miyashita,Eur.J,Neurosci.8,2118-2128,1996)。immediate-early geneのうちzif268は側頭葉とくに傍嗅野(36野)において対連合学習に伴って特異的に発現する。fos、junなど他のIEGはこうした発現パターンを示さなかった。
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